三重県立盲学校

平成20年度 視覚障がい教育研修会
視覚障がい児にとっての触察について

8月5日(火)視覚障がい教育についての夏期研修会を行ないました。それについて、お知らせします。

講師は、 筑波大学付属盲学校(現付属視覚特別支援学校) で、全盲の教諭として長年にわたり数学教育に携わっていらっしゃる、高村明良先生にお願いしました。

テーマは、「視覚障がい児にとっての触察について」で、持参された点図(点で表した図面)を実際に触察しながらの研修となりました。

以下は、講演の概要です。


@触察とは

単に「触る」、「ものに触れる」ことではなく、何かを獲得・理解するために「触れる」ことである。見える人には「見て、わかる」ことが、視覚障がい者には非常に難しい。指先で情報を得ることは、視覚障がい者にとっては大事である。しかし、初めはどう触ったらよいか分からないから、教師が触っている物を触らせる。一緒に触って、言葉がけをすることや、言葉として表現させる指導も、忘れてはならない。また、意識を持って触らせることも大切である。

A触察の準備

・机に向かって椅子に座ったとき、姿勢を正して、机と平行に座る。その際には、身体と机の間をにぎりこぶしひとつ分空ける。

・触察する物を机の真ん中において触る。

B触察の指導手順

  1. 先生が生徒に手を添えて、一緒に動かして、生徒に「触っている」ことを自覚させる。
  2. 生徒に手を添えて、声かけをしながら、一緒に触る。
  3. 一人で触らせ、物体の状態の変化を手の動きに記憶させる。その際に適宜声 かけをすることを忘れてはならない。

上記の手順は立体を触る場合にも応用できる。

ワークショップとして、実際に楕円や丸、多角形などを触りましたが、晴眼者にはなかなか判別が難しかったようです。また、直線とゆるやかなカーブの違いや、まっすぐな線と斜め上がりの線の区別なども、触察では難しいことなどを体験しました。

C触察能力と教科指導について

触察能力(触って形を理解すること)が身につくことによって、はじめて教科の内容の理解が深まる。触察能力を身につけずに、教科の内容だけを優先しても、教科の内容の理解力は伸びない。まず、教科指導の前にやるべきことは、物に触ることを嫌がらないように、物にいっぱい触ることである。何があるか分からない状況や環境では、「怖い」感情を持ってしまう。そうならないような配慮が必要である。特に好奇心旺盛で何にでも触りたがるような幼児期に、積み木やブロック、色々な材質のものなど、身の廻りに触れるものをおいて、積極的に物に触れる環境を整備しておきたい。

触ることに慣れさせて、楽しめるような配慮をすることが大事である。

  1. 意識的に触らせる。
  2. 恐怖のないように触らせる。
  3. 喜びのあるように触らせる。 以上のことを念頭に置いて、指導したい。

D立体の触察(例、立方体)

目で認識できるのは三面だけだが、手でつかむことによって六面すべてに触れることができることに留意して、以下の手順で触察する。

  1. 上辺の正方形の面を触察する人と平行に置く。
  2. 角と辺の曲がり具合がわかるように、十本の指で包み込むようにして持ち、六面すべてに触り、頭の中にそのイメージが記憶されるようにする。

指先は、一般的に平面は理解しにくく、立体のほうが理解しやすい。辺、面、頂点の位置関係をしっかりと理解することで、持たせる方向によっては、歩行にもつながっていく。これらの理解は、ひとつずつの段階を経て、身についていくものである。

E立体認識の歩行への応用

立体認識がきちんとできれば、学校(教室)や駅は、大雑把に言って、積木と同じように直方体(立方体)の組み合わせでできている、という認識に発展しやすく、理解することにより、頭の中に大きな立体の三次元イメージを形成することができる。

歩行における空間認知については、現在地がわかれば、頭の中の三次元イメージに沿って、自分自身が点として動けばよいことになり、学校や駅でもスムースに移動できるようになる。

しかし、この能力の体得にはかなり個人差がある。

以上が、講演の内容でした。

*高村先生のお話の中に出てきた、お勧めの「触って立体感覚を育てる積み木」を扱っているのは、 童具館・和久洋三氏(外部リンク) です。


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