■学校長より
「緑のしたゝる丘
そよ風さやかな丘
朝夕になつかしい山王の丘よ」(桑名北高等学校 校歌 風かおる 山王の丘)
昭和55年4月開校、令和元年度に創立40周年を迎え、これまでに1万人を超える卒業生を輩出している本校は、校歌にあるように、桑名市北部の「山王の丘」に立地する高等学校です。正門に続く通称「北高坂」には、卒業記念に植樹された40本を超える桜があり、春には満開となって生徒のみなさんを迎えてくれます。
本校は、創立以来、地域との関わりのなかで、新しい学びや新しい学校づくりに挑戦し続けてきました。総合的な探究の時間「みらい」、保育園で子どもと実際に触れ合うコミュニケーション授業、「主体的・対話的で深い学び」の視点を取り入れた授業展開等、これらの教育活動は、県内はもとより県外にも高く評価され、平成30年度にはキャリア教育文部科学大臣表彰を受賞いたしました。
また、創立40周年を契機に、本校で育みたい生徒像を、校訓として「自律、誠実、協働」との3つの言葉にまとめました。いつの時代であっても必要とされるこれらの資質・能力を身につけ、そして地域や社会を支える人材を育成するため、本校はこれからも挑戦し続けてまいります。
わたしたち教職員一同は、生徒のみなさんの成長や、夢と希望の実現に向けて、また、地域に信頼される学校づくりに向けて、引き続き力を合わせてしっかり取り組んでまいります。
今後とも、ご理解、ご支援をよろしくお願いします。

■学校長講話より
【令和5年度 北高祭~文化の部~】
全校生徒のみなさん、2日間の北高祭~文化の部~の全プログラムが終了しました。
昨年度までの3年間は、新型コロナウイルス感染症の影響により、プログラムを短縮して開催してきましたが、今年度は、コロナ前と同じ2日間開催に戻して、実施することができました。
みなさんは、何日も前から準備し、本番を迎えたことと思います。
私は、まず、北高祭本番までの準備と、当日の運営の中心となって頑張ってくれた、生徒会執行部のみなさんの努力に、敬意を表したいと思います。
また、
昨日の展示や模擬店販売で、日頃の取組の成果を発表してくれた文化部のみなさんやクラスのみなさん、
そして、
本日のステージ発表で頑張ってくれたクラスや部活動、そして有志のみなさん、
今は、取組を終えたばかりで、ほっと一息、という状況だと思いますが、
この2日間の取組が、みなさんの成長につながる機会になったのであれば、
さらには、
みなさんの母校である、この桑名北高校を、ますます好きになってもらう機会になったのであれば、
先生はとても嬉しく思いますし、今年度の北高祭~文化の部~は、大成功だと思います。
この2日間の経験を、みなさんの今後の学校生活に、そしてみなさんの今後の人生に、ぜひとも生かして貰えるよう、期待しています。
【令和5年度 2学期始業式】
みなさん、私が1学期の終業式でお話ししたこと、覚えていますでしょうか。
「若いみなさんが過ごす夏休みの41日間は、私のような年長者が過ごす41日間よりも値打ちがある。」
「知力・体力とも最も伸びる十代後半に過ごす一日は、たいへん貴重である。」
「だからこそ、この41日間、意味のある過ごし方をしてほしい。」
と、私はみなさんにお話ししました。
いかがでしょうか。
この夏休み、ふり返ってみて、無為に過ごすことなく、有意義に、一日一日、一瞬一瞬の時間を、大切に使うことはできたでしょうか。
ところで、
ギリシア語には、「時間」、「時」を表す言葉が2つあります。
1つは「クロノス」、もう1つは「カイロス」といい、どちらも「時間」に関係のある、
ギリシア神話に出てくる神様の名前でもあります。
「クロノス」は、
1年=365日、1日=24時間、1時間=60分、1分=60秒 というように、
過去から未来に連続して流れていく「時間」であり、
世界の誰にでも平等に与えられており、
誰とっても同じ長さを刻んだものであって、
本校で言えば、国語も数学も、芸術も体育も授業時間は50分と決まっている、あの「時間」のことです。
現在の英語の「clock」(時計)のもととなった言葉でもあります。
一方で、「カイロス」は、
人によって、或いは場面によって、早く過ぎたり、なかなか進まないように感じたりする「時間」です。
楽しいときや集中しているときは、あっという間に時間が経ってしまいますが、
辛いときや退屈なときは、とても長く感じてしまう、あの「時間」。
それから、
感動したり、とても悲しかったり、といったいつもと違う特別な意味のある「時間」。
これらも「カイロス」といいます。
ですので、「カイロス」は、「クロノス」と違って、過去から未来に向かって、粛々と一直線に流れているわけではなく、いつ訪れるのかわからないもの、とも言えます。
そんなことから、16世紀の絵画では、神様カイロスには、
後ろ髪は生えておらず前髪だけが生えているように描かれています。
このことから、
「チャンスの神様には、前髪しかない」
「絶好の機会は、後でつかまえることができない」
という諺があるほどです。
学校生活を有益な時間とするためには、刻一刻と流れる「クロノス時間」を過ごす中で、
いつ訪れるかわからない「カイロス時間」を逃さずに活かす。
こういう心構えでいることが大事だと、私は思います。
2学期は、「クロノス時間」でいうと、一年で最も長い学期です。
一方で、
インターンシップ、修学旅行、文化祭といった活動や、3年生のみなさんにとっては、「進路決定」といったかけがえのない時間、すなわち、「カイロス時間」が訪れることが予想されます。
この「カイロス」時間を逃すことなく、その前髪をつかまえて、
「クロノス時間」を意味のある時間にできるよう、
今から、そうした心構えで、2学期を過ごしてほしいと思います。
【令和5年度 1学期終業式】
私は、始業式で、2・3年生のみなさんに、二つの言葉を送りました。
一つ目は、目標を設定しその実現に向けて取り組んでほしい、という想いを込めて、
「千里の道も一歩から」
二つ目は、自分や家族、友人だけでなく、あなたと出会う全ての人に、敬意を持って接してほしい。
「Respect everyone」
いかがですか、みなさん。この1学期、1年生のみなさんを含めて、これら二つを実行に移すことはできたでしょうか。
「基礎力診断テストで、前回よりも、全教科10点アップをめざすぞ」
「5月の県総体では、前の大会の成績を越えるぞ」
など、学習活動や部活動、あるいはプライベートな場面で、みなさんそれぞれが目標を立て、そしてその達成に向けて、努力を積み重ねることは、できたでしょうか。
高校に入学して、新しい人間関係を始めることとなった1年生のみなさん、そして、2年生、3年生のみなさんは、進級をきっかけにして、新たな友人との出会いや先生との出会いがあったかもしれませんが、そうした変化がある中ででも、これまでと変わりなく、友人や先生方に敬意を持って接することはできたでしょうか。
実は、今日は、本校でALTとして大変お世話になったカーリーン・キング先生が、この夏休みに母国に帰られる、ということで、この後、離任のご挨拶をいただくこととなっています。
カーリーンさんの母国は、ジャマイカです。
ジャマイカは、日本から離れること約1万3000km。とても遠いところにある国です。日本と同じ島国ですが、日本よりもずっと赤道に近くて、日本のような冬はなく、言葉や習慣、さらには地形や歴史も、日本とは大きく異なっています。
そうした異国から、はるばる来ていただき、みなさんとともに、この学び舎で同じ時間を共有していただきました。
みなさん。
今、みなさんの毎日は、年齢も、言葉も、出身地も、そしておそらくものの考え方も、それほど大きく変わらない人間関係の中で、過ごしていることと思います。
でも、世界は、とても広いのです。
その世界の広さを、みなさんには、カーリーンさんの離任の日である本日、あらためて深く考えてもらって、そして、世界のいたるところに、自分とは異なる環境で過ごしているたくさんの人々が暮らしていることに思いを馳せてもらいたい。
そのうえで、誰に対しても敬意を持って接することのできる人になってほしい。
「Respect everyone」
この言葉を、あらためてみなさんに伝えます。
さて、明日から、夏休みに入ります。期間は、41日間。とても長いです。
この「41日間」という日数、時期をずらして、入学式・始業式が始まった3か月前の、4月10日から同じ日にちを数えてみると、5月20日までとなって、ちょうど中間考査が終わったときまでにあたります。
いかがですか。
このように考えると、特に1年生のみなさんにとっては、この4月10日から5月20日の間は、とても変化の激しかった41日間だった、と思い起こされるのではないでしょうか。
2・3年生のみなさんにとっても、やはり、たくさんの変化が起こった期間だったことと思います。
ここで、少し違う角度から考えてみましょう。
こんな「問い」を立ててみました。
「私にとっての41日とみなさんの41日間では、その重みが全然違うのではないか」
という「問い」です。
私の年齢は54歳ですから、これは何日間かというと、1年を、うるう年を考えずに、365日として掛け算して、19,710日。
19,710日が私の人生の全体ですので、これを分母にして分子に41日を置いたとしたら、41日間というのは、私の人生全体の中の0.2%ということになります。
0.2%では数値が小さいので、1000分率に直して、2パーミルとしましょう。
校長 一尾哲也:54歳
54年×365日=19,710日
41日/19,710日=0.2%
=2‰(パーミル)
今度はみなさんの場合で、3年生の年齢18歳で計算してみると、1年365日×18年間で、6,570日。
6,570日が18歳を迎えたときの人生の全体ですので、これを分母にして、41日を分子にすると、0.6%。
1000分率に直して、6パーミルとします。
高校3年生:18歳
18年×365日=6,570日
41日/6,570日=0.6%
=6‰(パーミル)
校長が過ごす41日間が人生の全日数に占める割合は「2」なのに対して、みなさんの過ごす41日間は「6」になります。
つまり、みなさんの過ごす41日間は、私の過ごす41日間の3倍の値打ちがあるのです。
私のような年長者とは、その重みが大きく違うのです。
この計算が、数学的に正しいかどうかは分かりません。
しかし、これが、私が立てた「問い」に対する、私なりの「答え」です。
若いみなさんが過ごす一日一日、そして、知力・体力とも最も伸びる十代後半のときに過ごす一日は、たいへん貴重なのです。
みなさんには、それを分かってほしい。
だからこそ、
この41日間を、無為に過ごすのは慎んでほしい。
この41日間を、意味のある時間として過ごしてほしい。
この41日間を、自らを成長させる時間に、自らの成長につながる時間になるように過ごしてほしい。そう願っています。
最後に、今度は、私からみなさんに「問い」を投げかけて、私の話を終えたいと思います。
私からみなさんに投げかけたい「問い」、それは、
「君たちは、どう生きるか」
という「問い」です。
この「問い」への「答え」は、みなさん自身の中にあります。
みなさん自身が、自律的に探究して、答えを探し求めてもらいたいと思います。
【令和5年度 北高祭~体育の部~ 校長講評】
今年度の北高祭~体育の部~は、6月2日(金)の実施を予定していましたが、あいにく天候に恵まれず、二度の延期を経て、三度目の正直、ようやく本日、無事開催することができました。
開催に向けて、何日も前から準備に勤しんでもらった生徒会執行部のみなさん、ご苦労様でした。本日の開催が実現したのは、みなさんの努力の賜物です。
また、昨日(前日)の放課後、小雨の降りしきる中で、一生懸命にグラウンド整備にあたってもらった、野球部、サッカー部、陸上競技部、テニス部、バスケットボール部、バレーボール部、バドミントン部、卓球部のみなさん、ありがとうございました。みなさんに手伝ってもらったおかげで、今朝は予定時刻どおりに開始することができました。
そして今日、各競技の進行が円滑となるように、みなさんそれぞれ、与えられた役割を、責任をもって果たしてもらいました。
その結果、ここ山王の丘から、若くて逞しい大きなエネルギーが産み出されたように感じます。
今年の北高祭~体育の部~のテーマは、「水滴石穿(すいてきせきせん)」。小さな力でも積み重なれば強大な力になる、という意味です。
本日、この山王の丘で見せてもらった大いなるエネルギーは、みなさん一人ひとりが、その役割を果たす中で産み出されたものであり、これぞまさしく本年度のテーマどおりの「水滴石穿」、そのように私は感じました。
今年の北高祭~体育の部~は、大成功のうちに幕を閉じます。
しかし、私は、この成功は、成功といえどもまだ道半ば、本当の意味で成功には達していない、そのように思います。
では、どうすれば成功のゴールにたどり着けるのか?
それは、本日ここで産み出したエネルギーを一過性で終わらせるのではなく、これからの学校生活の中で、昇華させ活かす中でたどり着ける、そうすることで初めて、真の意味で、北高祭~体育の部~が成功したと言える、そのように私は思っています。
みなさんのこれからの学校生活がより充実したものとなるよう、本日産み出したエネルギーをみなさんそれぞれが昇華させることに期待して、私からの講評といたします。
【令和5年度 入学式式辞(抜粋)】
44期生のみなさん。本日は、是非みなさんに覚えておいてほしい言葉があります。その言葉とは、「自律 誠実 協働」です。
この三つの言葉は本校の校訓です。本校の教育活動の目標や方針を、言葉にして表したものです。
最初の「自律」という言葉はどういう意味か。これは、「自らを律する」と書きます。「自分の行動は、自分自身がコントロールする」という意味です。
「誰かに言われたから、そのように行動する」のではなく、「自分で目標を立てて、その実現に向けて努力を惜しまない」。そのように行動しましょう。私たち、桑名北高校の教職員は、そんなみなさんをしっかりサポートします。
「自分の人生の主役は、自分自身だ」。そう思えるよう、自分を磨きあげましょう。
「誠実」という言葉はどういう意味か。これは、「まごころがあって、いつわりがなく、まじめなこと」という意味です。
私たちの住む社会、世の中には、さまざまな「きまり」や「ルール」があります。こうした「きまり」や「ルール」は、メンバーのみんなが、それを守ることで、はじめて成り立ちます。誰かに見られていなくても、誰もいないところであっても、世の中の「きまり」や「ルール」に対して、正直に振舞いましょう。みんながこのように行動することで、他の人に対する信頼感が生まれ、社会全体が安定し、暮らしやすくなるからです。
私たち教職員も、「きまり」や「ルール」を誠実に実行できる個人の育成を使命として捉え、これを日々の教育活動の中で実践することを通じて、我が国の法治主義を支える人材を社会に送り出すことに尽力いたします。
「協働」という言葉はどういう意味か。それは、「同じ目的のために、協力して働くこと」という意味です。
これからみなさんは、国語や数学などの教科の学習、体育祭や文化祭などの学校行事など、高校時代でしか体験できない活動に取り組むこととなります。そのときに意識してほしいのです。みなさんの隣には、同じクラスの仲間が、同じ部活動の仲間が、同じ44期生の仲間がいる、ということを。そして、同じ志を持って入学した桑名北高校の先輩方が、すぐそこにいる、ということをです。
そうした仲間たちと協力し合い、中学時代には成し遂げられなかったことに挑戦してほしい、一歩前に踏み出してほしい、と願っています。私たち教職員一同、そんなみなさんの「チャレンジ精神」を大事に育んで参ります。
「自律 誠実 協働」この3つの言葉を意識しながら、今日から始まる桑名北高校での学校生活を、自らの手で築き上げていきましょう。