SBP|ソーシャル・ビジネス・プロジェクト

  ソーシャル・ビジネス・プロジェクト(Social Business Project、通称SBP)は、人口減少や高齢化の進む地域の中で、その地域の高校生が中心となって、行政や民間企業の協力の下、地域資源を活かしたビジネスを立ち上げ、自ら働く場を作り出すことで、地域に残りふるさとを守っていこうとする取り組みです。
南伊勢高校南勢校舎では、岸川政之さん(多気町まちの宝創造監:当時)の講演をきっかけに、「高校生でも地元の活性化のために何かできるんじゃないか」という思いが盛り上がり、平成25年度に有志が集まってSBPが発足しました。岸川さんをアドバイザーに迎え、南勢校舎の生徒と先生、南伊勢町役場の職員で活動しています。

あるもの探し ~まちの宝発見~

 南伊勢高校SBPのメンバーは南伊勢町に住んでいながら、実は南伊勢町のことを深く知らないということが分かり、まずは南伊勢ブランド開発委員会のメンバーの事業所を訪問し「地域の宝もの」を探すことからはじめました。

 事業所を訪れると、事業主さんは南伊勢町に対する熱い思いを語りながら商品について丁寧に説明してくれました。「高校生が地元に興味を持って、話を聞きに来てくれることがうれしい」と言ってもらい、SBPの活動について好意的に受け止めてくれるとともに、私たちに対する期待もひしひしと感じました。

セレクトギフト ~詰め合わせたのは、とっておきのこだわり~

 あるもの探しで出会った、南伊勢町のすばらしいものを高校生の感性で発信していくことはできないかということで、高校生が選ぶ南伊勢町のおすすめ品「セレクトギフト」を企画し、プロジェクトがスタートしました。このギフトには、美味しい商品だけでなく、さまざまなこだわりが詰まっています。

 南伊勢町の美味しいものを試食し、試食した人の感想や採点をもとに高校生が商品を選定します。選んだ商品について、生産者を訪問し、仕入れ交渉を行うとともに、その商品の魅力やおすすめの食べ方、商品開発での工夫や苦労などを聞きます。ギフトには、手書きの「商品の紹介文」と高校生の南伊勢町への思いを綴った「ふるさとからのラブレター」も同封します。

 この商品は、主にお歳暮用に限定数販売しています。2014年の販売開始からこれまで4回にわたって、1,200個を完売しました。町外に住む方々に南伊勢町の商品を喜んでいただき、ふるさとを思い出す機会となっています。町内に住む人に、住んでいても知らなかったふるさとの味を知ってもらっています。

 セレクトギフトの取組は、全国に新たに生まれたSBPのモデルプロジェクトとなり、沖縄県西原町や青森県中泊町、鰺ヶ沢町、深浦町などでも創られていくようになりました。

たいみー焼き ~新しい南伊勢名物の創造~

 SBPオリジナルの商品を作りたいと考えた生徒から、南伊勢町のゆるキャラ「たいみー」の形をしたたい焼き「たいみー焼き」をつくってみてはどうかというアイディアが出され、2013年度末からたいみー焼きプロジェクトがスタートしました。

オリジナルの金型の製作 ― 美里工業高校とのコラボ

 課題はオリジナルの金型を購入する資金。SBPの活動資金だけでは実現不可能かとあきらめかけていたとき、沖縄県立美里工業高校の先生が協力を申し出てくれました。2014年8月に美里工業高校を訪問し、お互いの取り組みやたいみー焼きのデザインについて議論。11月に金型が南勢校舎に届きました。

認知度の向上と金型の大型化

 SBPの生徒は南伊勢町内の物産イベントに参加し、たいみー焼きを配ることで、たいみー焼きやSBPの認知度を向上させました。これらの活動成果により、大型の金型製作に係る費用の一部について、町への予算要望が認められ、セレクトギフトの売上と合わせて、大型の金型を購入することとなりました。この金型のデザインには、美里工業高校のCADデータが使われています。

販売開始 ― 南伊勢町の新しい名物へ

 2015年、南伊勢町町制10周年記念事業で「次世代に残したい郷土料理」として、たいみー焼きが紹介され、大型の金型を披露するとともに、来場者に無料でふるまいました。そして、「第3回Sの交流フェア」において、たいみー焼きの販売を開始しました。その後、南伊勢町内だけでなく、多気町や志摩市、愛知県名古屋市など町外の様々なイベントでも販売し、たいみー焼きをより多くの方に食べていただきました。これまでに、2400枚以上のたいみー焼きを販売してきました。

ご当地焼きのモデル化 ― Sの絆焼きの誕生

 2016年7月に愛知県立高浜高校にSBPが設立されました。高浜高校SBPは、たいみー焼きをヒントに、お客様が希望する形でたい焼き風に焼くことができる「焼き型台」の制作販売に取り組み始めました。このご当地のキャラクタ-焼きは、2017年2月に三重県多気町で開催されたSBPエリア交流会のワークショップにて、南伊勢高校SBPが「Sの絆焼き」という名称を付けさせていただきました。

ふるさと教育 ~未来をともにつくる仲間づくり~

 南伊勢高校SBPの取組が、地元愛を醸成する取組として、少しずつ認知され始めるようになりました。2015年、地元の南勢小学校から地域で活躍するキャリアモデルとして、SBPの生徒に授業を行ってほしいという依頼がありました。

 2016年度からは、小学生がふるさとについて学ぶ授業のカリキュラムの中に、南伊勢高校SBPによる授業が組み込まれるようになりました。小学1・2年生に、たいみー焼きを使って授業をしています。

ヒロメるプロジェクト ~新食感をお届け~

 南伊勢町には、ワカメの近縁種であるヒロメが生息しています。シャキシャキとした食感が特徴で、柔らかいとろみのある味が魅力です。しかし、水揚げされても、市場には出回らず自家消費されたり、ワカメと言う名で食されていたりするなど、町内においてもその名はあまり知られていません。

 南伊勢町では、ヒロメの養殖技術の確立や流通経路等の開拓等を進め、漁業従事者の安定的な収入の確保に努めようと、三重外湾漁業協同組合、南島種苗センター、三重県伊勢農林水産事務所などが協力しながら、ヒロメを地域資源として拡大する取組が行われています。

 そのような状況の中、ヒロメを商品化したい、その際のパッケージデザインを南伊勢高校SBPにお願いしたいという依頼が漁協からありました。ヒロメの生態や、南伊勢町でのヒロメの価値などに感動し、ヒロメに強い関心を持った私たちは、パッケージデザインだけでなく、高校生の視点から、まちの宝としてヒロメの魅力を広めに広めるプロジェクト、ヒロメるプロジェクトをスタートさせました。