公開講座への取り組み

三重県立盲学校 下田典子

2 公開講座の実際

(1)平成17年度8月11日に実施された公開講座のテーマは「見えにくさとその支援」とした。参加者は26名で校種も多岐にわたった。

ア 午前の部 弱視グループによる講座

最初に「見えにくい人たちとは?」という内容で、弱視の説明を行なった。目の構造、弱視者に対する指導上の配慮などについても話をした。次に「弱視者の理解」として、見えにくさの要素
@ピンボケ
A混濁
Bまぶしさ
C視野が狭い
D中心暗点
E照明・コントラストの不足
F眼球振とう
などがあり、見え方には個人差があること、また主な眼疾患とその特徴も症状などを交えて伝えた。次に手作りのシミュレーションレンズで「見えにくさを体験してみよう」とし、
A 混濁状態(白内障、ぶどう膜炎など)
B 中心暗点(黄斑変性症など)
C 視野狭窄(網膜色素変性症など)
の3パターンのレンズを装着し、ジャンケンや机の上の物品を探す、字を書く、色を判別することなど、さまざまな体験をしてもらった。また、近づいて見る・拡大コピー・弱視レンズ・拡大読書機・電子データ化(パソコン利用)など、見えにくさを補償する手段などについても、実際に体験してもらった。

 イ 午後の部  歩行グループによる講座

盲学校における歩行指導についての話と歩行体験を行なった。まず定位についての説明を行なった。[定位とは、自分が今どこにいるのか、どこから来て、どこへ向かうのかということ][定位するために、中途失明の人は今まで視覚によって知っているものを視覚以外の感覚に置き換える。生まれつき全盲の子は、視覚以外の感覚によってイメージを作っていく][指導は、今、どのような理解段階にあるかを把握してそれに応じることが必要である]また[移動の安全をどのように確保するか]について話をした。[室内を一人で移動するためには、防御の姿勢、伝い歩きと方向とりができるとよい][屋外の単独歩行のためには、上記プラス白杖の技術などが必要][手引き歩行はどの場面でも有効な方法][環境の整備も大切]であることも話した。また歩行環境の状態を言語で伝えるファミリアリゼーションについても伝え、歩行体験を実施した後に、グループごとの気づきについての意見交換も行なった。

(2)平成18年8月1日に行なわれた公開講座は、「指で識る」と題して開催し、参加者は28名であった。

ア 午前の部 点字グループによる講座「指で知る点字の初歩」

内容は次の通りである。
1.点字の歴史
2.点字の組み立て
3.点字の読みと書きの違い
4.点字を書く道具
5.表記法について。その後「母音」「子音」などを点字盤で打った。
6.墨点字を読む
7.点字を書く
8.点字に触れる。
また[本人のやる気が大切、無理はしない][先天盲と中途視覚障がい者では指導法が異なる][姿勢、指送り、触感覚が大切である]ことなども確認した。

イ 午後の部 盲重複グループによるワークショップ

参加者を高等学校教員、全盲、弱視1、弱視2の4グループに分けて、ワークショップを実施した。まず「アイマスクをして、触ってみよう」という課題で、モンテッソリー教具や本校教員が作った教具を触察した。また、アイマスクと手袋をして、視覚のみでなく指先の感覚も肢体不自由を擬似体験できるような状況に設定し、ボタンやチャックのある服の着脱、はさみなどの道具類の扱いなども体験してもらった。その際に[何を手がかりにするか。何を目標とするか]という観点をもち体験すること、また行動観察する人も設定し、それぞれ感想などを記入してもらい、全体の場で発表を行なった。その後グループ別に教材、教具の製作にとりかかった。その際にはアイマスク体験や、それぞれが関わっている子どもを念頭におき、「何を目標とするか」を設定することから教材作りを始めた。また「盲・知的障がい重複児童・生徒の教材作りのポイント」を手作りの教具や市販の物などを例にして、本校の全盲の教員が具体的に説明した。高校グループは神経衰弱のカード作りを行なった。その他は数の概念形成(3までぐらい)、位置関係(右、左、上、下など)、手指機能の向上などで、それぞれのグループで話し合いをしながら試行錯誤しての作成であった。なおそれぞれのグループの教材作りには、本校の教員が加わり[外界への気づき、能動的行為、因果関係を知る、動きを引き出す、空間を知る、分解・合成、始点・終点、同じ・違う]などの理解について、アドバイスをした。なお参加者のアンケートは次のようなものであった。


1 はじめに
2 公開講座の実際
3 アンケートから(参加動機などの抜粋)
4 今後の展開と課題


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