三重県立盲学校

三重県立盲学校 弱視教育研修会
弱視児の視機能の評価と支援

2006.6.29.
奈良県立教育研究所(外部リンク)
指導主事
鈴木英隆氏

1.視力とは

(1)遠距離視力

 5mで測る。右左両眼で、3つ正解ならそのところの視力があるとする。

(2)近距離視力

 30cmで測る。読書距離。

(3)最大視認力

 一番自分の読みやすい位置で読んでいる時の距離で測定する視力。

2.乳幼児・知的障がい児の視力評価

(1)ランドルト氏環による視力評価

 ・3歳程度からの知的レベルを要する。

 ・例えば0.05と0.02を比べれば、少しの差ではあるが、その違いは大きい。正確な視力測定をして把握することが大切。

(2)絵視標による視力評価

 ・2歳半からの知的レベルを要する。

 ・鳥、蝶、魚などから選ぶ。

(3)森実式ドットカードによる視力評価

 ・2歳からの知的レベルを要する。

 ・うさぎの顔の中の目の大きさの違いで評価。

(4)T.A.C.による視力評価

 ・0歳から可。

 ・しましま(縦縞)が描かれたうちわのようなものを隠して、見せる。そっちを見たら、見えているということ。しまの幅をだんだん狭くしていくことで、 どこまで見えているかがわかる。

(5)行動観察による視力評価

 ・転がるボールを目で追うか、など。

3.視機能検査の教育的利用

(1)弱視レンズの処方

 ・遠用弱視レンズ:
両眼視ができる子は双眼鏡。
単眼視の子は(弱視の子はほとんどこっち)は単眼鏡。
認知力=遠距離視力×倍率
(例えば、遠距離視力0.1の弱視児が6倍の単眼鏡を利用すると0.1×6=0.6の認知力が得られる。
小学校の普通クラスでは0.5~0.6は必要。)

(2)読書用文字・板書文字

 ・弱視児のための拡大システム:
第1段階 視物への接近。(目を近づける。)
第2段階 視覚補助具を使う。(弱視レンズ・弱視用拡大読書器)
第3段階 視物そのものの拡大。(コピー、パソコン、立体模型)
第4段階 視物そのものの映像化。(写真、スライド、ビデオ、パソコン)

4.弱視レンズの指導

(1)弱視レンズの基本的指導

(2)弱視レンズの応用的指導

(3)高レベルの弱視レンズ使用技術

 ・遠用弱視レンズと近用弱視レンズ

 ・就学前に、目と手の協応を図る。
   近用レンズで、点と点を結ぶ→
   見本どおりに写す→
   文字指導→
   絵カードによる認知500枚→
   遠用レンズによる絵カー ドの認知

 ・「年少弱視児用弱視レンズ基本訓練プログラム」、
  「弱視レンズ広視野空間探索訓練プログラム」、
  「弱視レンズ短期訓練プログラム」、
  などがある。

5.弱視児のための指導資料

(1)弱視児に困難な学習内容

 例:
  校内の様子(生活)、
  対象な図形(算数)、
  公共施設の見学(社会)、
  季節ごとの虫さがし(理科)、
  身近な景色(図工)、
  型紙(家庭)
  など

(2)弱視児の漢字書字指導の留意点

  ・第1画目に注意して指導する。
  ・鉛筆の腹で書くことが多いので、先のとがった鉛筆か、シャープペンシルを使うようにする。
  ・1画1画筆記用具を上げさせ、ひげをつけさせない。

(3)弱視児の道具使用

  ・「弱視児用用具使用技術指導プログラム」があり、領域Ⅰ~Ⅳに分けて5段階で示されている。

 例として、領域Ⅰは押す・引く・押さえる操作を中心とした作業となっており、

  1. ステップ1では色鉛筆Ⅰ、
  2. ステップ2では色鉛筆ⅡとカッターナイフⅠと小刀Ⅰ、
  3. ステップ3ではカッターナイフⅡと小刀Ⅱ、
  4. ステップ4ではのこぎりと彫刻刀、
  5. ステップ5ではカッターナイフⅢと糸のこぎりと包丁となっている。、

(4)弱視児の作図指導

  ・「弱視児用作図指導プログラム」があり、作図器として、 ものさし(1・2年)、
   コンパス(3年)、
   分度器(4年)、
   三角定規(4年)
  が3段階に分けて書かれている。

  ・コンパスの使用は練習が必要で、芯をずらさないことと、針の先を黒くして見やすくすることが大切である。

6.終わりに 特別支援教育と視覚障害教育

  視覚障害についての発信は盲学校からもっとしていかなくてはならない。

7.質疑応答より(一部)

  ・奈良県は高校入試に点字がある。個別配慮もある。

  ・単眼鏡は使い方に慣れていないと、板書を写すのに一生懸命で授業が聞けないこともある。

  ・黒字に白の文字と白地に黒の文字の場合では、黒字に白の文字の方が識別能力は3倍ほど上がる。

  ・点字使用への踏み切りは、失明してから。それまでは残存視力を活用。ただし墨字の読速度が遅い場合(3年間くらいやってみて)は、点字に切り替えた方が良い。

 ・稲本正法他(1995):教師と親のための弱視レンズガイド、コレール社


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