上高ニュース

2016年度2学期始業式 校長講話(定時制)

2016.08.29

 私は若い頃、先輩の先生方から冗談交じりによくこんなことを言われました。
「若い頃の雑用は買ってでもせよ。」
 これを、ある脳神経外科医が提唱しています。「人のやりたがらない雑用を自ら買って出る。ささいな用事を面倒くさがらずコツコツやる。その習慣が身に付けば、前頭葉が鍛えられ、自らの意志で主体的に行動する力が身に付く」とその医師は断言しています。脳にとって雑用は、スポーツに例えれば筋トレや柔軟体操に当たるという訳です。

 こんな話を、ある会社の人事担当の人に聞いたことがあります。コピーを取るという仕事でも「初級・中級・上級」の3段階がある。
・ 「コピー初級」の人は、コピー機の操作をただ単に知っているだけ。人に聞かなくてもとりあえずコピーを取れる人。
・ 「コピー中級」の人は、例えば10枚のコピーをする時、1枚目をコピーして、紙の傾き、文字や写真の濃度を確かめてから残りの9枚をコピーする人。
・ 「コピー上級」の人は、頼まれた文書に目を通し、「この人はこんな文章を書くんだ」とか「こんなことが今、会社で話題になっているんだ」というように、内容についての関心を持ちながらコピーする人。場合によっては、誤字・脱字を含めて不備を指摘することもできる人。
 世の中には、同じ「単純な仕事」をしていても、このようにはっきりと違う仕方で仕事をする人がいるという訳です。

 ここで、ある会社が北海道に宅配便の版図を広げた時の話を紹介します。
「営業を始めた当初は注文が一件もなく、小荷物の配達を独占していた郵便局の前で、訪れる人に手当たり次第に声をかけるも全く相手にされない日々。そんなある日、一人の社員の元に郷里の母親から荷物が届く。中には手編みのセーター、手製の味噌、刻んだ大根と油揚げ。そして『風邪に気をつけて頑張りなさい』との手紙。『真心の詰まった大切な荷物を運ぶこと。それが俺の仕事だ。』と気づいたこの社員は、今まで以上に腰が折れるほど深く頭を下げて声をかけ続ける。すると一人の老婦人が、『あなたがあんまり熱心だから』と孫のために編んだセーターの入った荷物を差し出した。それ以後、次第に注文が入るようになり、多くの営業所を抱え現在に至っている。この社員は今でも赤ん坊を抱くかのように必ず両手で荷物を受け取っている。」

 小荷物を受け取るという「単純な仕事」の意味を知り、深さに気づき、誠実に対応する人になれるかどうか。そこが、人の成長や組織の発展の分岐点です。

 それでは、高校生である皆さんにとって、大切にすべき「単純な仕事」とは何か。例えばそれは、
・知らない言葉があれば、その都度、辞書で調べることです。
・途中を省略せずに丁寧な字で計算式をノートに書くことです。
・授業が終わったら、机や椅子をきちんと元に戻し、道具類を「慈しみの心で」片付けることです。
・教室や廊下にゴミが落ちていたら拾って捨てることです。

 来月には「文化祭」があります。準備等で忙しい日々が続くと思います。「雑用」もたくさんあると思います。「助け合う喜び」「一つになる充実感」を感じながら、思い出に残る素晴らしい文化祭にしてください。これで、2学期始業式の話を終わります。

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