上高ニュース

1学期終業式

2015.07.17

 1学期の学校生活を締めくくるに当たり、今日は、「私たちは今、どのような時代を生きているのか」ということについて話したいと思います。

 一言で言うと、私たちは今、非常に厳しい時代に生きているということです。日本は今、世界一厳しい大きな課題を三つ抱えています。一つ目の世界一は「高齢化世界一」、二つ目の世界一は「財政悪化世界一」、三つ目の世界一は「原発処理」です。

 先ずは高齢化について。総人口に占める65才以上の高齢者の割合を「高齢化率」と言います。1950年の高齢化率は5%に満たなかったのですが、1985年に10%を、2005年には20%を超え、現在は26.0%に達しています。つまり、4人に1人は65歳以上のお年寄りという割合です。そして、2060年には39.9%に達し、10人中4人が65歳以上の高齢者となる社会が到来すると推計されています。すなわち、今から45年後の日本は、6割の現役世代で4割のお年寄りを支える国になるということです。この高齢化の割合、そして高齢化のスピードは世界一です。日本は、どの国も経験したことのない、人類史上未だかつて経験したことのない「超高齢社会」に突入するというわけです。

 この高齢化に伴い、年金を含む社会保障費は年々膨張し、国はそれを借金でまかなっています。平成26年度の国債発行総額は177兆7,000億円で、これもまた世界一。

 そして三つ目の世界一は、史上最悪のレベルに達した原子炉メルトダウンへの対応です。日本はまさに三つの世界一を持つ「課題先進国」なのです。

 皆さんは、自分が生きている今の日本社会が抱えるさまざまな課題について、どの程度関心を持っているでしょうか。

 ここで、ある国際調査の結果を示します。この調査は、日本、アメリカ、中国、韓国の中学生・高校生を対象に、2009年に行われた意識調査です。その調査の中に、このような質問がありました。

「あなたは、自分の参加により、変えてほしいと思う社会現象を少し変えられると思いますか。」

社会への参加意欲を問うこの質問に対し肯定的に答えた中高生の割合は、高い順にアメリカ69.8%、韓国68.4%、中国62.7%、そして日本は30.1%でした。他の3カ国の中高生に比べて、日本の中高生は社会への参加意欲がかなり低いということです。この質問以外にも、社会への参加意欲を問う質問がありましたが、同じような傾向が読み取れる結果となっていました。

 皆さんは、この結果をどう受けとめますか。そして、自分と社会との関わりについて、どう考えますか。

 「自分はあまり新聞も読まないし、ニュース番組もあまり観ない。ボランティア活動もしたことがない。だから、社会への参加意欲は低い。」というふうに考える人も多いかもしれません。

 たしかに私たちは、世界で最も厳しい課題をはじめ、多くの課題を抱える日本という国で生きているわけですが、同時に、日々の生活の中で、何かの生活課題や困難さを抱えて生きています。それが現実だと思います。

 私は皆さんに、「自分の生活課題だけではなく、社会的な課題にも広く眼を向けてほしい」と思っていますし、社会的な課題に対しては、「自分には関係がない、誰かが、大人が解決するだろう」という姿勢ではなく、「自分に何ができるか」という姿勢で、自分なりに社会に関わりを持ち続けてほしいと思っています。皆さんも知っているとおり、選挙権年齢が18歳以上となりましたので、この思いはますます強くなりました。

 その一方で、このようにも考えてほしいと思っています。すなわち、「社会的な課題だけではなく、自分の生活に直接関わる課題を考えたり、解決しようと努力したりすること自体が、実は社会的な課題に向き合うことになる」ということです。何故なら、自分にとって身近な問題は、社会が抱える問題と無関係ではないことが多いからです。今、皆さんが、どうすればよいのか分からず困っているという問題があるとすれば、その問題は、「自分一人で解決すればよい」と考えてしまうかもしれませんが、私達一人ひとりが考え、解決しなければならない社会的な問題であるかもしれないのです。

 とにかく、身近な問題や課題を出発点にして、日本の社会が抱える問題に対しても、避けるのではなく、自分なりに考えてみることが大切だと思うのです。

 春爛漫の中で始まった1学期も、厳しい暑さの中で終わろうとしています。

 明日からの夏休み、3年生にとっては「試練の夏」「挑戦の夏」になるはずです。時間と健康の自己管理をきちんと行い、「成長の夏」にしてください。

 以上で、1学期終業式の話を終わります。

2015年7月15日 東 則尚

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