上高ニュース

進路の手引き 巻頭言「自己指導能力を高める」

2015.07.06

校長  東 則尚

 相手の話を聴いて直ぐにどうすべきかを答えることができるカウンセラーが優れたカウンセラーではないように、子どもが自分で考え、自分でやるべきことを肩代わりする親が良い親ではありません。自社の製品を顧客の意に反して押し売りできる販売員が優れた販売員ではないように、指導内容を一方的に生徒に教え込む教師が良い教師ではありません。何かを求める相手への対応の場において、優れた対応に概ね共通してみられるのは、「相手が自分で考え、判断し、自ら行動するように配慮している」という点です。

 ある高校で、3年生の担任をしていた時のことです。ほぼ全員が進学希望というクラスの担任は初めてということもあり、進学情報誌やデータブックには目を通すよう心がけ、関係情報の収集に努めていました。1学期末の三者懇談を控えたある日、各生徒の成績、進路希望等とデータブック等を見比べながら受験を勧める大学・学部を考えていた時に、「これは一体誰が解決すべき課題なのか」とふと思ったのです。その後、私は、「担任が進学情報に熟知するだけではなく、生徒自身が必要な時に必要な情報を得る方法を熟知していることこそ重要である」と考え、「調べる方法」の指導を強化していきました。そして、よく考えもせずに進路相談に来る依存傾向の強い生徒に対しては、受験という「人生課題」を自分で解決していけるよう支援に心がけました。

 「人は、自分の目標達成や課題解決を人任せにしている自分に気づき、自らの責任でやるしかないと覚悟を決めた時に、達成・解決への最も大きな一歩を踏み出す」と言えるのではないでしょうか。本校の生徒には、早くこのことに気づき、「その時、その場で、どのような行動が適切であるか、自分で判断し、決定して実行する能力」、すなわち「自己指導能力」を身に付けた「自立した学習者・生活者」に成長してほしいと強く思っています。この「自己指導能力」は、目標を明確化し、その目標に到達する方法を自ら考え、見つけ出し、達成状況を自己評価しながら目標へと自らを導いていくことで向上していきます。

 この『進路の手引』は、生徒の皆さんが「自己指導能力」を高めながら、受験という「人生課題」を自分で解決していけるよう、進路に関する基本的な情報を卒業生の体験談も織り込みながら取りまとめた手引書です。本書を大いに活用してください。そして、皆さん一人ひとりの「大いなる夢」の実現を期待しています。

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