仮名は漢字を字母として、日本で生まれた我が国固有の文字です。

中国から漢字が伝えられると、漢字の音を借りて日本語を表記するようになりました。

初めは漢字をそのまま使っていましたが、長い年月を経て漢字を簡略化し、現代の仮名が生まれました。そのため、漢字の草書体と仮名が似ているものもあります。

「不」→「ふ」、「女」→「め」、「也」→「や」などです。

書道で学習する「仮名」は、私たちが小学生の頃に学習した「ひらがな」ではなく、おもに平安時代に使われた「仮名」です。用筆が全く違うので戸惑うかもしれませんが、その美しい線や形をしっかりと味わって欲しいと思います。

 

仮名の単元では、古典のことを古筆といいます。

古筆とは広義には古い筆跡全般を意味しますが、狭義にはおもに平安時代から鎌倉時代に書かれた、優れた仮名の古典のことをいいます。

これらは、平安時代の宮廷や貴族の儀式などで贈り物として書かれた調度品が多く、当時の上流貴族の間では、華麗な料紙の美しさとともに、筆跡の美しさを追究し、欠くことのできない贈答品として尊ばれました。内容的には古今集を中心とした勅撰集や、有名歌人の私家集などが多く、物語が書かれていることはありません。

 平安時代中期から後期にかけては、優れた仮名の作品が数多く生まれ、そのころに書かれた仮名を上代様と呼んでいます。また、桃山時代から江戸時代初期にかけては茶道が盛行し、観賞用として古筆が非常に大切にされるようになりました。

もともと仮名古筆は、巻物や冊子本形式に書かれていましたが、茶道の隆盛とともに観賞用としてそれらを切断して掛け軸などにしたてることが多くなりました。こうして分割されたものを古筆切(こひつぎれ)と呼んでいます。

 

問一

語句を選択する問題です。該当ページをじっくり読んで解答してください。特に掲載ページがわかりにくい問題には、ヒントをつけてあるので参考にしてください。

 

問二

① 字母というのは、簡略化されて生まれてきた仮名文字の、そのもととなった漢字のことで、例えば、「あ」の字母は「安」になります。(教)P6465に平仮名の単体の一覧表が載っていますが、筆で書かれた文字の左下にあるのがそれぞれの字母です。

 

      ちなみに、片仮名の字母をここに挙げておきます。

 

      ア・阿   イ・伊   ウ・宇   エ・江   オ・於 

      カ・加   キ・幾   ク・久   ケ・介   コ・己 

      サ・散   シ・之   ス・須   セ・世   ソ・曽 

      タ・多   チ・千   ツ・川:*  テ・天   ト・止  

      ナ・奈   ニ・二*  ヌ・奴   ネ・祢   ノ・乃  

      ハ・八   ヒ・比   フ・不   ヘ・部*  ホ・保*  

      マ・末*  ミ・三   ム・牟   メ・女   モ・毛  

      ヤ・也         ユ・由          ヨ・與*  

      ラ・良   リ・利   ル・流   レ・礼   ロ・呂  

      ワ・和*  ヰ・井   ヱ・恵*  ヲ・乎   ン・无*

         *印については、異説があります。

問二

続き

② 昔からいくつもある手習いことば(書道の勉強のための詞)の代表的なものです。平安時代中ごろから広く使用されるようになりました。

 

 意味は「咲く花の色香はかんばしく匂うけれども、ついには散りゆくものである。わが住むこの世で誰が常なるものがあろうか。人は生まれてもやがて死ぬものである。無常は生あるものの避けることのできない運命である。有為すなわち生滅無常なこの世の中を越え出るとあさましい夢を見ることはなく、そして無為自然の中に入ると迷いの酒に酔うことはないであろう。」(第一法規出版株式会社刊 書写・書道用語辞典より)

 

      その他の手習い歌

      「あめつちの詞」

   あめ(天)つち(地)ほし(星)そら(空)やま(山)かは(河)みね(峰)
たに(谷)くも(雲)きり(霧)むろ(室)こけ(苔)ひと(人)いぬ(犬)うへ(上)すゑ(末)ゆわ(硫黄)さる(猿)おふせよ(生)江の(榎)衣を(枝)なれ(馴)
ゐて(居)

           平安時代初期に作られたといわれています。

      

      「鳥啼(とりな)く歌」

   鳥啼く声(こゑ)す 夢さませ 見よ明けわたる 東(ひんがし)を 

   空色映えて 沖つ辺(へ)に 帆船(ほふね)群れ居(ゐ)ぬ 靄(もや)のうち

          明治36年に、新聞「万朝(よろず)報」が募集したなかの当選作です。

③ ①で解答したものを元に、自分の名前を書いてみてください。

 平安時代には、濁音・半濁音の文字はなく、前後の関係を見て読み分けていました。

例えば「じゅんぺい」さんなら「しゆんへい」として解答してください。

 

問三

①② (教)P7273を見てください。

③ 変体仮名というのは、平仮名とは字母の違う仮名や、字母が同じでも平仮名ほど簡略化されていない仮名のことです。

古筆には平仮名と変体仮名が交ぜて使われており、古筆の学習をするためには外すことのできない仮名です。

(教)P73には蓬萊切の変体仮名が挙げてもらってありますし、P6869には一般的な変体仮名の一覧表がありますので参照してください。

ちなみに本文から変体仮名を探す方法は、P73の左端に釈文(何が書いてあるか平仮名の活字で書いてあるもの)がありますが、その平仮名の右側に漢字がついているものが変体仮名のしるしです。

 

問四

① (教)P74を見てください。

② 問三の③と同じくまず本文(P74)から当該箇所を探し出し、左ページの釈文で読みを確認してください。釈文の中にある/は本文中の改行場所を表しています。

 

問五

理由には教科書に載っている古典の特徴を書くのではなく、自分の考えを書いてください。