第11巻 スポーツ医・科学 MIE

 

【コーチング・マネジメント班:

平成14年なぎなた、サッカーJr三重選抜選手の意識について】

 

はじめに

 昨年から引き続きサッカーJr男子と本年から新しくなぎなた女子を加えた対象を『個人用練習ノート』

に記録してもらうことから診断のいとぐちをつかむことにした。

三重県でのトップ選手の集団であるから高い意識を持っているのは当然であるが、結果主義、勝利至上

主義に陥ることなく競技生活を送ってくれるように期待して、一人一人の練習ノートを集計した。集計

結果は選手、監督にフィードバックして、指導上の資料にしてもらった。

「よく動く」「よく感じる」「よく考える」「よく食べる」「よく休む」生活習慣を選手活動に融合させて

いく競技生活をジュニア時代から育ててもらいたい。

 

方  法

 対  象 サッカーU−16:45名(中学生14、クラブ7、高校生24)

      なぎなた    :12名(成年女子5、少年女子7)

 調査機関 平成14年8月〜12月

 調査内容 『個人用練習ノート』への記録内容

(1)      最終目標

(2)      現在の目標

(3)      コーチ、監督からの課題

(4)      睡眠時間

(5)      本日の目標

(6)      トレーニング内容

(7)      練習内容

(8)      身体的コンディション(数値表示)

(9)      心理的コンディション(数値表示)

(10)練習、試合の反省

(11)明日へ向けての本日の反省

(12)コーチ・監督の説明、指導で不明な点、嬉しかった点

(13)メンタルトレーニングの実施状況

 

結果と考察

(1)      最終目標

なぎなた 技の習得、体力強化(41%)

     国体入賞(33%)

     国体出場(25%)

サッカー プロ(35%)

     全国大会、国体出場(24%)

     Wカップ(13%)

     大学、高校進学、良い指導者など

(2)      現在の目標

なぎなた 技の習得、体力強化(50%)

     体力強化(25%)

     声を出す(25%)

サッカー 技術の習得(33%)

     高校でのレギュラー(24%)

     全国制覇、全国大会、国体参加(20%)

(3)      コーチ、監督からの課題

なぎなた 技の向上(66%)

     心の安定(16%)

     みる、声(16%)

(4)      睡眠時間

なぎなた 平均7時間30分

サッカー 平均7時間

(5)      本日の目標

なぎなた 技の見習い、習得(50%)

     集中した練習(25%)

     無理なく頑張る(16%)

サッカー 個人技の強化(71%)

     勝つ、挨拶をする

(8)      身体的コンディション

なぎなた 体 調 悪い   (33%)  良い (41%)

     食 欲 ない   (25%)  ある (41%)

     故 障 気になる (33%)  ない (25%)

サッカー 体 調 悪い   (17%)  良い (46%)

     食 欲 ない   ( 6%)  ある (66%)

     故 障 気になる (22%)  ない (53%)

(9)      心理的コンディション

なぎなた 不 安 無い   (41%)  多い (25%)

     悲しみ 無い   (91%)  多い ( 8%)

     怒 り 無い   (91%)  多い ( 0%)

     活 気 無い   (25%)  多い (58%)

     疲 れ 無い   ( 8%)  多い (25%)

     悩 み 無い   (50%)  多い (25%)

サッカー 不 安 無い   (60%)  多い (20%)

     悲しみ 無い   (68%)  多い (17%)

     怒 り 無い   (66%)  多い (11%)

     活 気 無い   ( 4%)  多い (80%)

     疲 れ 無い   (24%)  多い (42%)

     悩 み 無い   (48%)  多い (15%)

(10)練習、試合の反省

なぎなた 満足度 低い   (25%)  高い (33%)

     疲労感 高い   (66%)  低い ( 8%)

サッカー 満足度 低い   (13%)  高い (53%)

     疲労感 高い   (53%)  低い (17%)

(11)明日へ向けての本日の反省(なぎなた、サッカー共通)

   声を出せるようにしたい。てきぱき行動する。目的を持って練習する。テンションを高めて、良い

パフォーマンスをする。良いプレーが出来るよう条件整備をする。自分の課題を意識して、集中し

て練習する。一つ一つのプレーへの集中。一日一日の練習の集中。もっと上手くなる。もっと皆と

コミュニケーションを取る。基礎的なミスはしない。コンディションを良くするための生活をする。

体力をつけてプレーを正確にする。悪いコンディションでも力を出せる体を作る。プロになるため

に、人の倍の練習する。感謝の気持ちも分かるようになった。運動量を増やしてボールに絡みたい。

次のプレーを考えたファーストタッチをする。フリーの時の動きが甘い。予測プレー、判断を早く

する。相手を良く見てプレーをする。練習後のフリートーキングを大事にする。シュートをしっか

り決める。

(12)コーチ、監督の説明、指導で不明な点、嬉しかった点。

   納得して技が決まったとき。技が決まり誉められたとき。アドバイスを受けられたとき。心技体の

バランスが良かったとき。面つけが早くできるようになったとき。プレーで誉められたとき。走り

終わって、叱られてやる気がでたとき。コーチに誉められ、質問して不安が消えたとき。高校生に

上手いと言われたとき。

 

まとめ

 中学3年生から女子大生までの年齢差のある選手に『練習ノート』記入方法を用いて調査した。調査項

目から感じて欲しいことを念頭に入れながら作ってみた。上手になるためには、練習、目的意識、自立

の気持ちが大切であることが、大勢の選手から感じ取れたことは収穫であった。

『練習ノート』の記入時点が合宿中、自由練習中、代表決定直前であったりして条件が同じではありま

せんが、日常的に考えている内容が表現されていると考えます。

武道の「なぎなた」と集団スポーツ「サッカー」とでは外部から見る者にとっては同じ視点で見られな

いと思われるが、競技する選手には特別な意識差は感じられない。最終目標は明らかになっていますが、

競技を始めた動機が何であったのかについては聞いていません。しかし、この事は大切なことだと思い

ます。

上手い選手、強い選手、レギュラー、うちの子、うちの出身、勝った等々のスポーツの見方しかしない

指導者、親、応援者。最良の選手を育て、成長してもらうためには、初期の段階から周囲も指導者も高

く、持続的な指導理念を持ち続けることが必要です。強いチームにはそれなりの伝統的な練習マニュア

ルがあり、名監督と言われる人はそれなりの人間的魅力をもっています。それらの指導の流れに乗れば、

勝利という河口に流れ着くでしょう。「良く感じ、良く考える」舵を働かせることが大事です。

少年から青年にかけてのスポーツの指導がどのような方向でなされているかが問われます。指導者の自

慰行為の材料ではないし、親の期待の犠牲にも、母校の伝統の為にでもない、自分たちの将来に役立つ

ものを獲得するスポーツであることです。「頭でサッカー、なぎなたを理解していれば生涯楽しめるけど、

そうでないと、現役が終わった途端に楽しめなくなります。」個々人としてのバランス、集団でのハーモ

ニーが出せる能力を、スポーツを通じて磨いてください。

目的意識達成のために夢を語れる選手にアドバイス出来る指導者になるためには、お互いが、教え、学

び会う相互補完のマインドの発想が必要です。練習は観察です。何が出来て、何が未熟か、何が欠けて

いるのか判断し、行動に移し、反省をして再度、観察の繰り返しです。サッカーの指導に、ルックアラ

ウンドとシンクビフォー(常に周囲を良く見ること、何かをする前に考えておくこと)で視野を広げよ

と言われます。指導者も当然のことです。勝利を目指すなら、知者、人格者、強者、適応者の要素を備

えねばなりません。

最良の選手作りにアドバイスとなれば幸いです。

 

参考資料

 C.P.Volleyball1・2・3・4号 バレーボール

 サッカーを愉しむ 光文社新書 アンリミテッド

 少年サッカーからW杯まで 文春新書

 武術の新人間学 PHP文庫

 心がやすらぐ魔法のことば PHP文庫

 心のバレー ソーケン通商(株)

 

(村林 靖 安井みどり 藤田一豊)