本年度、寄宿舎には小学部2名、中学部1名、高等部5名、高等部専攻科8名の合計16名の生徒が在籍しており、小学部生から高等部専攻科までと舎生の年齢層は幅広い。生活面に関しては、学齢期の舎生の指導を始めとして、成人舎生においても、日常的な生活支援を必要とする舎生がいる。さらに精神的な支援を必要とする舎生も多数おり、幅広い支援が求められてきた。
これらの状況をふまえ、舎生の社会的自立をめざして一人ひとりの実態に即した生活目標及び指導の手立てを検討し、一貫した指導体制を図った。
それぞれの舎生においての生活目標及び指導の手立てを職員全員が共有できるように「個別の支援計画」を立て、目標に向け、学級担任や保護者、本人と話し合った。中でも特に支援を必要とする学齢期の舎生には、支援の仕方について職員間に大きな違いがでないよう、「個別の指導計画」を作成した。「個別の指導計画」では、「舎生の実態」から「具体的な目標」「指導の手立て」と職員全員が共通意識を持ち日常生活において、統一した指導を実践した。また、10月には経過と見直しを行いそれぞれの達成度を確認し指導の充実を図った。
○舎職員の専門研修の一環として視覚障がい体験研修を実施した。
アイマスクや弱視体験器具を利用して、個々の舎生の障がい環境下で日常生活動作を実体験することで障がい特性への理解を深め、より実効的な個別指導・支援を模索する機会となった。とりわけ弱視生徒に関しては、眼疾、受障時期、視覚経験、性格等の様々な要素が個々の寄宿舎での日常生活に大きく影響し、その訓練内容も異なっている。指導員がより効果的な日常生活動作訓練を進め社会的自立を推進する為には、“弱視者は、どの程度の保有視覚を基に生活しているのか≠的確に捉えなければならない事を学んだ。
○点訳ソフトの知識を深める研修を実施することで、舎生の支援につなげた。
まず月毎の基本活動を
@生活用品の買い物学習、
A屋外活動、
B室内学習と構成し、活動目的の明確化を図った。
終了後は各活動内容や状況について研修会において各担当者より報告され、全寄宿舎職員に於ける活動内容と成果についての情報共有に努めた。
4月、参加する児童・生徒に対し活動の趣旨と内容を説明し、理解を得る。
参加者から新たな経験への挑戦や、授業では経験出来ない事への体験希望等、積極的な意見を聴く事が出来た。又、公園での屋外活動を通じ公共施設の利用方法や社会的マナーやルールについて学んだ。
5・6月、天候不順の為、室内活動が中心となった。楽器演奏や日本地図パズル、聴覚や触認を用いたゲーム等を使用した学習により、未知な物事に対し積極的に興味を持ち接触する機会が創出された。
7月、季節の行事に参加する事により、知識を深め工作を楽しむ為の活動が企画された。参加者は新たな分野への興味関心を深めると共に、一般的な社会習俗についての認識を得る事が出来た。
9月、天候が安定していたこの時期は主に外出しての買い物学習が中心となった。室内での活動では、夏休みの生活を振り返り発表を行う。話し方や表現力の工夫について積極的に取り組む姿が視られた。
10月、音楽室や図書室等、校内施設を利用した学習活動を行う。タイムリーな話題を採用し活動を展開する事により、社会知識をより深める事が出来た。又、参加者が自主的に活動内容を工夫し選択できる様な企画も盛り込まれた。
11月、屋外活動では植物に触れ命の大切さを学んだ。その他、身近なものを使った実験や、俳句を詠み季節を感じる等、参加者の興味や好奇心を自然に刺激する様な活動が展開できた。
12月、普段買い物学習等で利用する身近な“お金”について、今一度深く考察することが出来た。お金の弁別方法はもとより貨幣の歴史や当時の価値を学ぶ事により、関心を持って物価の変遷や経済のしくみについて楽しく感じ取る事ができる活動となった。
1月、初詣やすごろく等の季節行事を経験した。各自の家庭行事とは又異なった驚きや喜びを感じられる貴重な時間を舎生同士で共有する事が出来た。又数字や言葉を使った室内ゲームでは楽しみ、競いながら知識の伸長にも繋がって行く様な有意義な活動が展開された。
2月、市町の人口数等、県内の行政機関から発表されるデータについて簡単に○×で答える事の出来るような問題を中心に楽しく時間を過ごした。各舎生の暮らしを支える行政の役割と機能について楽しく学ぶことが出来た。屋外活動では自ら植栽した植物を管理する重要性を学んだ。開花・収穫への期待や希望を語り合いながら早春を感じる貴重な体験を得る事が出来た。
3月、今後の自主通学への可能性も見据えて、駅迄の道程や施設の利用方法を確認しながら活動を楽しんだ。特にホーム内の危険個所については聴覚・触覚を基に確実に認知が出来る様、指導に努めた。