三重県立盲学校

進路をみすえた自立活動の取り組み

2 実践の概要

(4)調理 ― お菓子つくりと販売―

農閑期を利用して、それまでに自分たちで栽培・収穫した野菜を使って「お菓子つくりと販売」にも取り組んだ。視覚障害者の調理の方法については、それぞれの生徒が個々に授業で日々学んでいることも踏まえて、この作業時間においては、下記の3本に目標を置いて進めた。

<目標>

<活動計画>

作るもの
 「サツマイモフレッシュケーキ」「ミニどら焼き」

11月中旬

2時間 学習活動の説明:
班のリーダーきめ
調理練習
試食
ラッピングの工夫
相談
価格きめ
2時間 本番:
商品調理
お店での陳列
販売
      1時間 振り返り

<具体的な活動> 事前指導2時間

・各班のリーダー決め

あらかじめ教員がわけた2班に分かれて実習や活動を行った。各班のリーダーきめは、少し難航したが、自分たちの話し合いで選出することができた。今回の目的は上記に挙げた3点のため、作るものについては作業工程が少なく簡単なもので自分たちの育てた野菜から作れるものということで、教員のほうから提示した。

・調理の工程

どちらの班も班長が声かけをして教員に助言を求めながら、班員全員ができる作業を考え、班長が指示することができた。時間を少しオーバーして調理が完成した。出来上がったお菓子を自分たちで触ったり、匂いをかいだりし確認し、試食をした。おいしいという意見もたくさん出たが、カップに入れた種の量と焼き上がりの大きさが違ったり、思ったより甘くなかったり、生地が固かったり、形がとても変だったり…と各班から意見が出て、その意見をもとにお客さんにおいしいものを食べてもらうために、一つ一つの問題点について作業工程の中でどう改善できるのかを活発に話し合うことができた。

・ラッピングの話し合い

ビニール袋を使用し、ミニどら焼きの味の種類などが販売時に自分たちで確認できるように点字シールを作り商品に張ることになった。次週の作業時間が本番なのでそれまでの自立活動の時間などで、それぞれができることをすることになった。ラッピングの仕事を自活の授業などを利用して分担して行った。

<具体的な活動> 本番2時間

・調理

2回目ということもあり、一つの工程をやっている間に次の工程の準備をしたり、前回の反省で出た改善点を忘れずに進める事ができた。商品の袋詰めやシール貼りなども同時進行で行い、30分を残して商品が完成した。

・価格についての話し合い

自分の生活の中で比較できるものを出しながら「いくらくらいかな」と考えることができたが、意見を出せたのはほんの一部の生徒だけだった。昼休みの販売に向けて、お店にする教室に商品を陳列するのは教員と一緒に相談しながら行った。お店での販売の役割分担をそれぞれの班で決めて、授業が終わった。

・販売

前日までのチラシや放送の効果が出て、開店前からお店に列ができ、開店するとたくさんの人でにぎわった。呼び込み担当の生徒もしっかりと声を上げて活動することができた。しかし、会計担当の生徒は、次から次へとくるお客さんの商品の様々な組み合わせに自分の計算の速度がついて行かず、長蛇の列を作ってしまった。20分ほどで商品は完売して閉店となった。

<まとめ>

・今回の作業では、2班に分かれてそれぞれのお菓子を担当したが、練習調理の時にしっかりと手順を覚えて、役割分担することができ、また、調理後しっかり工程や味の反省ができていたため、本番は生徒一人一人が自信を持って活動することができた。

・日ごろの生活の中では、一つのことを一緒に考えて、協力して作業するという体験が少ないため、最初は戸惑いもあったようだが、今回の調理販売は、作業工程がわかりやすい事や目的がはっきりしているため、全員が比較的動きやすかった。

・班長の役割が大きく、指示もきちんと出せていて、本番調理の際はスムーズで驚いた。このような経験をたくさん積むことで、自分たちで考えて工夫して動く力がついていく一助になると思う。

・反省や課題としては、農閑期の限られたわずかな期間での単発の取り組みということもあり、販売に向けてはほとんど話し合いや練習の時間が取れず、教員主導で進める事になってしまった。学校内の様々なお客さんを招いての販売は、よい体験にはなったが、お金の計算などは本当に未経験な部分が多く、たくさんの課題が浮き彫りになった。しかし、このように、なるべく実生活に即した形で様々な模擬体験をすることで、生徒自身生き生きと楽しく学習することができ、また、生徒個人の課題を様々な場面から拾い上げることができると思う。


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