三重県立盲学校

普通科

高等部普通科では校内研修テーマ「一人ひとりに応じた自立活動のありかた」を基に今年度の高等部の研修のテーマについて話し合った。今年度は自立活動の歩行に焦点を絞って研修を行うことになった。視覚に障がいのある生徒にとって移動手段である歩行の力をつけていくことが自立への大きな一歩になる。白杖を持って歩くことだけではなく、体力作り、歩行前の基本的な姿勢や空間認知の力をつけていくための指導について話し合った。また個々の力を知るためのチェックリストを作成し調査を行い、実態把握を行った

高等部研修テーマ
高等部普通科における自立活動のあり方を考える
−個別の教育支援・指導計画に基づいた実践を通じてー
-歩行のチェックリストの検討―
研修方法
・具体的に高等部普通科8名の自立活動の歩行指導について検討する。
歩行指導の現状と課題について各担任より報告。課題に応じて実践を行う。
・他県や小中の歩行のチェックリストを基に、高等部普通科の歩行チェックリストの作成を行う。
作成したチェックリストで各生徒の現状を把握し今後の指導に役立てる。チェックリストの書式や検査項目、検査方法について検討を行う。
・年間の指導の成果や様子、今後の課題について話し合いを行い、次年度への課題を共有する。

研修内容

第1回研修(4/24)

高等部普通科の研修テーマについての話し合い。今年度は歩行に絞って研修を行うことを確認し、各担任に現在の生徒の歩行の現状と課題についての表の作成を依頼。

第2回研修(5/29)

・高等部普通科のテーマの確認

・東京都盲学校自立活動研究会資料を活用して、各段階での歩行指導の観点について研修を行った。普通科の生徒は、小学部段階の身体つくりとボディイメージ(身体感覚)の確立が課題の生徒が多いが、段階を飛び越えて援助依頼が出きるような実践をしていく必要があることも確認した。

・それぞれの生徒の歩行の現状と課題についての確認

各担任の作成した歩行の現状と課題についての資料に基づいて、各生徒の現状や課題点、解決に向けての手立てなどについて話し合いを行った。

>・課題となった点
手すりにシールを貼って教室の目印にしているがどんな段階を経て、はずしていけばよいか。
障がいの受容について白杖の必要性を本人にしっかり理解させる。
いかに安全にシンボルとしての白杖を持たせるか。
空間認知能力を高めるために卒業までに何ができるか。
左右の概念をどのように教えていけばよいか。

第3回研修(6/26)

歩行指導の観点、チェックリストについて、島根盲学校の資料を基に話し合いを行った。 島根盲学校の資料の中から、本校の生徒の歩行能力をつけるための「自己の身体の理解」「位置関係の理解」の二つの項目に絞ってチェックリストの作成を行うことになった。

歩行訓練士との情報交換会や第2回の研修の中で課題となったことについて話し合いを進めた。
・歩行の基本は進む方向にまっすぐ身体を向けることが大切である。
・両手で手すりを持ってのかに歩きは方向がわからなくなりよくない。身体を正面に向けてまっすぐに階段を下りられるように指導していくことが大切である。
・自分の体をもっと知って、効果的な手の使い方などを知ることが必要である。
・実際に教室や校舎内を歩いた後、机上で部屋の配置や校舎の配置を確認し理解さす訓練が大切である。自分の歩いてきた道を言葉で表現させ、きちんと理解して移動できているかをチェックするとよい。小学校の段階から探検を行ったり、地図づくりをしたりする経験が大事。

第4回研修(9/11)

歩行チェックリストの調査項目について話し合いを行った。高等部の段階で身体のどの部位まで理解していればよいか各項目を検討しチェックリストの原案作成に向けての話し合いを行った。また、2学期の歩行指導にむけて、現在の課題点や状況について各担任より報告を行い情報の共有を図った。

第5回研修(10/23)

作成した歩行チェックリストの各項目、書式について確認を行い、チェックしやすいように修正を行った。「自己の身体の理解」では、高等部の段階で理解してほしい身体の各部位の名称とその部位を動かす基本動作までを入れ、「位置関係の理解」では45度、135度の方向転換は抜き、東西南北の理解は最後の項目に入れチェック表の作成を行った。

次回研修までに各担任で生徒のチェックを行い、どこまで身体について理解しているか調査を行った。

第6回研修(11/27)

歩行のチェックリスト「自己の身体の理解」を使って調査した個々の生徒のチェックリストを基に高等部8名の自己の身体の理解について、どのぐらいまで理解しているか検討を行った。

・弱視の生徒については自分の眼に近い部分はよく理解していたが、遠い下半身の細かな部分が弱い傾向があった。

・全盲の生徒については、小学部から本校にいた生徒は体の各部位についてはよくわかっているが、途中から本校に来た生徒はまだ不十分の部分があり今後の指導が必要である。

・チェックリストの中に高等部で知っていて欲しい内臓(食道、胃、心臓、腸)の項目を入れる。

第7回研修(12/18)

作成した歩行のチェックリスト「位置関係の理解」を使い個々の生徒のチェックを行い、位置関係の理解について検討を行った。

第8回研修(1/29)

7回研修でできなかった生徒の歩行チェックリスト「位置関係の理解」について検討を行った。

空間認知能力を高めるための点字導入前の指導について研修を深めた。

・触っているが指先だけでしか触っていない、相手の反応を見て答えを探してしまう、経験の少なさ、動くスピードが遅いために位置の確認ができないなどの問題点がある。

・布や皮を触って「つるつる」「ふわふわ」などの触覚を感じる。

重さは大きく差をつけたものから始めて、だんだん差を少なくしていく。

・十字、T字、L字はその場所を歩行した後に、簡単な地図を作って説明させたりレーズライターを使って書かせたりしてきちんと確認しないと、言葉だけの理解で終わる生徒が多い。全盲の生徒は立体、平面、点字で理解させることが大切。

第9回研修(3/5)

一年間の歩行指導の生徒の様子と来年度の課題点について話し合った。

空間認知の力をつけていくための、指導について教材の工夫について具体例をみて研修を行った。

まとめ

本年度は自立活動の歩行に絞って話し合いを進めた。普通科歩行のチェックリストを作成し、普通科の生徒8名についての「自己の身体の理解」「位置関係の理解」について実態を調査し、どの部分が弱いかについて知ることができた。チェックリストを作成するにあたり、高等部でどこまで身体を理解していなければならないか、位置関係を理解させるためにはどのような指導をしていけばよいかを話し合った。

自分の身体を知り、その上で基本的な平面の位置関係(上、下、真ん中、斜めなど)の理解をさせ、その後自分から見た物の位置や相手から見た物の位置、教室内の位置関係、教室間の配置、位置関係というように広げていくことで校内の位置関係が理解でき、歩行へとつながっていく。

歩行に必要な基本的な概念をつけていくために、チェック項目をどのように確認すればよいかについて話し合いを行った。また、教材の工夫の仕方や導入の仕方などを知ることができた。指先だけではなく手のひら全体を使って物を触る指導について、重さや数の理解について実物をみせてもらい研修を行った。

チェックリストの検査結果については個々の担当により検査のやり方や聞き方が異なり、どこまで理解しているかが分かりにくい点があった。年間を通して多面的に見ていく必要がある。


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