三重県立盲学校
小・中学部 学部研修
「歩行指導のありかたについて」
本校では、NPO法人の歩行訓練士(日常生活訓練員)が非常勤講師として、週1回4時間来校し、希望者に歩行指導を行なっている。このことに関して、様々な問題点が出てきた。そこで、まず問題点の整理を学部研修で、機会を設けて行った。
歩行指導のあり方について、次のような問題点が考えられる。
- 歩行訓練士は非常勤扱いになっているため、十分に指導を受ける時間がない。現在は月一回の割合で行われている。
- 理療科の生徒は授業時間中に歩行指導を受けることができない。
- 小・中学部の児童生徒の中には、白杖歩行の指導を受ける以前空間認知能力や生活力に弱さが見られる子もいる。そういった事柄は、歩行訓練士の指導だけでは不十分であるし、通常の教科指導や自立活動などでも行なわなくてはならない指導である。どの段階から歩行指導として行う必要がでてくるか、またどのような内容での歩行指導が必要なのか、学部で話し合い検討していってはどうだろうか。教員側と歩行訓練士との意思疎通や指導の継続性や一貫性を考えると、訓練時間以外にも、歩行訓練士との話し合いや検討会などが必要ではなかろうか。(個別の教育指導計画との関連性を持たせる必要があるので。)
- 学校での歩行訓練を行う場合、白杖を使った歩行指導のありかたと、それ以前の生活指導のあり方など、学部での話し合いを深め、歩行訓練士に関わってもらう事項や時間なども検討する必要があるのではないか。
- 歩行訓練士と生徒との関係ができていないと、引継ぎや生徒理解に時間がとられてしまい、歩行指導の時間が十分に確保できない。
- 指導後の報告や歩行指導についてのアドバイス、ポイントなどを示唆してもらえるような体制ではない。
- 歩行訓練士に指導してもらうメリット、あるいはデメリットなどを学部で話し合ってはどうか。
このような問題点に対して話し合いを続け、次の点を確認した。
月に1〜2回の歩行訓練士の授業において、白杖を使う以前の訓練はしているが、内容は個人によって異なっている。現在は歩行訓練士といわず「日常生活指導員」という名称で、身辺自立とか空間認知といった白杖を持つ以前の訓練もしてくれている。
しかし、白杖歩行段階以前の子には教員が指導すべきでないのかという意見が提示された。他校では歩行訓練士の資格をもつ教員が指導を行っているところもある。そこで考えられることは、
- A・教員がする。
- B・歩行訓練士がする。
- C・教員が歩行訓練士の資格を取りにいって指導をする。
の3点があげられる。現在、本校には歩行訓練士の資格を持っている教員はいないが、今後、資格をとりたい希望者が出てきた場合、どのような手立てで取るか、県に問い合わせるなど、管理職にも相談しなければならない事項であろう。
また、現在では、歩行訓練の必要性があるかどうかは保護者の意向しだいとなっており、個人的に家庭においてそのような指導を受けている生徒もいる。(補助金がでる自治体とでないところがある)これは、保護者は歩行訓練を必要としているし、もしも一部の児童・生徒だけが指導を受けることになると、よくは思わないであろう。そもそも歩行指導は、出口に近い生徒のためのものであったが、日常生活指導などをすることになったため、小中からの希望者も増えた経緯がある。
問題は、どの段階から歩行訓練をするか、どうやって歩行訓練士に関わってもらうかを学校側がはっきり考えられていない点にある。また、教員が、「この子に歩行訓練を充実させてあげたいと」思っていても、保護者には「あの子だけ」と捉えられてしまう恐れがある。
今後、もともとの趣旨を保護者に理解してもらい、「何でもいいからやってもらおう」という意識を変えていくように働きかけていきたい。また教員もそれを共通理解して、しっかりとした方針を立てていくべきである。そのために、白杖を使う以前の指導など、教員もしっかりと指導できるような研修を積む必要がある。また、歩行訓練士に関わってもらうコマ数を、教員側で決めていく必要がある。その上で、日常生活で指導していく上で気をつけることや、その子の課題や指導法など、歩行指導の内容を、教員にも還元するために、現在では認められていない情報交換会なども実施したい、という意見もでた。
今後に向けて
- 本校の歩行訓練士が関わりだしてからの経緯、保護者の希望などを知っている人から話を聞き、これから歩行訓練士にどのように関わっていってもらうかを話し合う。情報交換会を学期に一回ぐらいしていきたい。保護者の希望を聞いていくと現状を変えていくことはできない。
- 歩行訓練士に指導してもらうメリットは何なのか、教員の指導とどこが違うのかを確認する必要がある。また歩行訓練士とも、この点は是非、確認したい。
- 歩行訓練士と生徒の関係ができていないと、引継ぎや生徒理解に時間がとられてしまい、歩行指導の時間が十分に確保できない。担任との連携を密にすることでその点の改善ができる。
- 担任にとっては、歩行訓練の日ごろの指導に生かせれるようになるので、指導後の報告やポイントを指示してもらいたい。(生徒に対する指導はしてくれているが、教員に対しての指導は現時点ではない。)
以上のことから、歩行訓練士と教員の連携の必要なことと、歩行指導に関して、全教員で取り組むために、チェックリスト作りが必要であることが話し合われた。また今後数年かかっても、白杖指導以前の指導や日常生活、空間認知に関わることなどについても、チェックリストを作り、児童・生徒の現状を把握し、指導に必要なことを認識する必要があること。学部を超えた指導の一貫性の道筋を作る必要があることなどが確認された。
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