近年における盲学校教育は、児童生徒数の著しい減少傾向と重複障害児童生徒数の比率増加という二つの大きな課題に対応することを迫られている。重複障害児童生徒数の比率増加に関して話を進めると、柿澤らによって行われた2000年の調査1)では全国の盲学校に在籍する重複障害児童生徒の割合は年々増加していることが、詳細に報告されている。
この調査結果における重複障害幼児児童生徒の割合を学部別に見てみると、幼稚部では62.72%、小学部では55.06%、中学部では48.54%、高等部では26.21%(但し学齢期以上の本科生も含むため18歳未満の生徒の割合は若干少なくなると思われる)である。この結果から幼稚部、小学部では半数以上が、中学部でもほぼ半数が重複障害を持っているのが分かる。
次に視覚障害と合併する障害の種類別割合は、知的障害が全体の80.62%、肢体不自由が6.61%、聴覚が4.44%、病虚弱が3.26%となっており、知的障害を合併する児童生徒が圧倒的に多い。加えて知的障害の詳細な内訳を見てみると、知的障害のみは45.27%、知的と肢体が10.69%、知的と情緒が4.80%、知的と言語が3.35%、以下知的と肢体と言語、知的と言語と情緒が続いている。
この結果を裏付けるように、私の勤務する盲学校でも自閉症や知的障害を併せ持っていると思われる児童、生徒が約半数を占めている。また保護者や一般学校、福祉機関からの教育相談も上の調査結果を裏付けるように、重複障害を持つ児童、生徒に関する進路や学校生活上での配慮などに関する質問や相談が年々増加している。
これらのことから、視覚と知的に障害がある児童生徒に対する指導法の確立、教育的支援のあり方を考えていくことは私達、盲学校に勤務する教職員の大きな課題であることは間違いない。
視覚障害教育では学齢期の児童生徒が障害の程度、種類、特徴、発達段階に応じて、習得しておきたい課題が多くある。また授業や学校生活を送る上で、多くの配慮や教育的支援を必要とする。このことは知的障害教育にも同様のことが言える。多くの課題があり、多くの配慮や教育的支援を必要とする。
そこで雑な考えをすれば視覚と知的に重複して障害を持つ児童生徒に対しては、視覚障害教育と知的障害教育をあわせて行うことが有効な手段になると思われるが、視覚障害と知的障害は互いに影響を与えあい、新たな課題を生み、また配慮すべき事も生じているかもしれない。また知的障害教育で用いられることの多い視覚に訴えかける方法は使用することが出来ないので、視覚に頼らない方法でアプロ−チしなくてはならない。そこで本研究では盲学校に在籍する重複児童生徒が習得すべき事柄は何か、またそれをどうやって習得させるのか、情緒や心理面で落ち着いて安定した学校生活を過ごすにはどの様な配慮が必要か、などを多角的な観点から考察する事を研究目的とした。