三重県立盲学校

歩行グループ研修
〈2〉 弱視者の歩行における問題点と、その対応について

弱視者の歩行について、参考になる事項が見い出されるよう、それぞれの個別の体験談に基づくフリートークを行った。

●つまずきの指導とはどういうことか?

・歩行訓練中のトラブル、例えば、どこかにぶつかったために、歩行訓練を拒否するようになってしまった場合、どのように指導したらよいのかというようなこと。望ましい指導としては、事故が起こらないような「予防的」指導の進め方に重きを置いた方が良い。

●弱視者に対して、全盲になった時を想定したアイマスクをしての歩行訓練は意味がないのではないか。それよりは、現在の視力を使いながら安全に歩く方法を考える方が有意義なのでは?

・全盲になった事を想定してアイマスクをするのではなく、アイマスクをすることによって視力によらない情報を集中して感じ取れることを目的にしている。

●視力が低く、日常は「やっぱり見えていないようだ」と感じるが、自転車に乗ることができており、今までにけがをしたこともないようである。不思議で仕方がない。

・「弱視者の見え方はどうなっているのか?ぼうっと見えるんですか?」とよく聞かれるが、判別はできにくいが、ぼうっとした景色とは感じていない。ハイビジョン映像と普通のテレビ画面の違いのようなもので、粒子の粗い画面といえるのではないか。

●緑内障で眼圧が上がったときや、白内障では曇りガラスごしに見ているように「ぼうっと」見えるといえるのではないか。

・近くの人を見て、それが誰であるのか判別できるのは、上が白い塊で下が黒い塊(服の色など)、どうも人らしい、状況から考えてだれだれさん。黒い横長の何かがあったら「木の枝?」、それをまたいで、動いたら「蛇?」、最初から蛇とは認識していない。過去の経験を複合して判断している。その意味からもいろんな経験を積む必要性がある。慣れたところや、動いているものは認識しやすい。経験→類推→合成→認識

●初めての交差点の信号はわかるのか?東西南北は?道すじをどう理解しているのか?どんな危険があるのか?

・大きな建物や目立つ建物を目印にして場所を理解することはできない。

目的地までに角をいくつ曲がったか、どっちに曲がったか、その記憶をもとに、帰りはその逆をたどる。

道に迷ったら、わかる地点まで戻る。高いビルなどは見えないので、目印にできない。

 単眼鏡を利用するのもいい方法である。最近は携帯電話のカメラ機能を用いて、見たい映像を取り、その画面を拡大して見ることも便利である。コントラストによっては見えにくい。

慣れない旅行などでは白杖を使用するが、自宅近くでは白杖を使用しない。

●普段は自転車に乗っているのに、なぜ今は白杖を使っているのか?

・近隣の人には、弱視者の見え方が理解しにくいだろうと思うので、本当は使いたいのに無理をしても白杖は使わない。

●歩道を歩いているつもりであったが、車道を歩いていることがあってから、白杖を使うようになった。信号を判断できずに赤なのに渡ってしまったとき、車に対する白杖の威力を知った。

●歩行地図の話しをするとき、必要な道に「○○ちゃん道路」などと、好きな名前を付けて説明すると、理解しやすくなる。

●視野が狭いと、いきなり人が目の前に見えて、怖い思いをする。

・小さなこどもは視野に入りにくいので、気を付けたい。

・視野が狭いと、信号を見付けにくいが、横断歩道の縁をたどって、その延長線の内側か外側を探すと信号が見付けやすくなる。

●音響信号は便利だが、信号近くの民家にとっては鬱陶しいだろうと思う、押しボタン式の信号が普及するといい。ボタンを押してしばらくして「青に変わりました」と言ってくれる信号が便利では。

●弱視者にとっては、段差・コントラストのない障害物・等は区別しにくい。

・経験をもとに判断をして危険を回避しているが、場合によっては「思いこみ」によりかえって危ないこともある。(段差・階段・縁石…)

・点字ブロックは、コントラストがはっきりしている場合は弱視者にとっても便利であるが、車いすを利用している人・ハイヒールの人・お年寄り等にとっては不便と思われ、共存できる良い方法はないだろうか。


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