上高ニュース

平成28(2016)年度入学式 校長式辞

2016.04.08

 柔らかな春の光に包まれ、木々の新芽に生命の躍動を感じる今日の良き日、御来賓の皆様、入学生の保護者の皆様の御臨席のもと、平成28年度入学式を執り行うことができますことは、私共のこの上ない喜びであり、誠に嬉しく存じます。本校を代表し、深く感謝申し上げます。

上野高校の制服を着て本校の校門をくぐった新入生のみなさん、入学おめでとうございます。皆さんは、義務教育を終え、今日から高校生として新しい生活に入ります。期待に胸を躍らせながらも、不安も感じていることでしょう。しばらくの間、落ち着かない日々が続くと思いますが、心を開いて分からないことは何でも尋ね、早く上野高校に慣れてください。
皆さんは、御家族や中学校の先生方のサポートがあったにせよ、最終的には自らの責任で高校進学を決められたことと思います。高校では、国民の義務としての教育状況から大きく変化し、自己責任に裏打ちされた行動が求められます。その時、その場で、何をすべきで何をすべきでないのか、どうすることが適切なのか、自分で考え、判断し、自主的・主体的に行動する力を身に付けていってください。

保護者の皆様、お子様の御入学、誠におめでとうございます。これまでお子様を育ててこられました皆様の御尽力に衷心より敬意を表すとともに、私共教職員に課せられた責任の重さに身の引き締まる思いでございます。お子様に寄せる思いを真摯に受け止め、私共は、お子様の大いなる成長を目指して教育活動に取り組んでまいります。どうか、本校の教育活動に御理解、御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 さて、新入生の皆さん。皆さんにお願いしたいことがあります。それは、「夢の実現に向けた自分の決意を表明する儀式」を自分で行ってほしいということです。物事の始まりの「節目」では「儀式」が行われます。日常生活でも同じです。毎日の挨拶、授業開始時の「起立、礼」、食事の時の「いただきます。」これらは一種の「儀式」です。スポーツ選手のなかには、練習を始める時に、自分を鼓舞するために毎回必ず同じ練習メニューを実行する選手がいるそうです。これも「儀式」です。
皆さんが本校で学校生活を始める今、「夢を実現するために必ずやること」考え抜き、自分の中で正式決定し、その決意を表明する「儀式」を自分自身で静かに、確実に行ってほしいのです。今後、挫折へと導く誘因はいくらでも出てきます。やろうとすればするほど、わざと邪魔をするかのようなことが起こるものです。そして、やがて「やる気」が削ぎ落とされ、その場しのぎの言い訳を探し出すようになってしまいます。そうならないために、触れば火傷をするくらいの気概を持って、「夢の実現に向けた決意表明の儀式」を行ってください。

 そのことをお願いしたうえで、こんな話をしたいと思います。皆さんも知っているように、オタマジャクシは、やがてカエルになります。尻尾が消えて足が生え、陸に上がって飛び跳ねることができるようになります。しかし、カエルになれるのなら、カメにもなれるかというと、そうはいきません。カエルにしかなれないのです。オタマジャクシがカエルになること、それは、「より自分らしくなる」ということです。ここに成長のあるべき姿をイメージしてください。
また、青虫はさなぎになり、そして蝶になります。この姿にも自分の成長をイメージしてください。青虫のあいだは思うように動けず、とても不自由な身です。しかし、さなぎを経て蝶になると、羽が生え、自由に飛び回れるようになります。「這う世界」から「飛ぶ世界」への変化です。しかし、トンボにはなれません。蝶にしかなれないのです。ここで悩んでしまうのではなく、羽が生えて飛べるようになることを喜ぶべきなのです。それが、「最も自分らしく輝いている姿」なのです。
皆さんの中に、他人との比較が癖になって自己嫌悪に陥り、今の自分を捨てて別人になろうともがいている人はいないでしょうか。言わば「自己否定の罠」にはまっている人です。憧れている誰かと比較し、嫌いな自分を消し去ろうとしたり、自分を捨てて別人になろうとしたりしてはいけません。「ダメな自分」「情けない自分」をあぶり出して、自己嫌悪に陥るのではなく、「ありのままの自分」を受け入れ、そういう自分と向き合い、つき合い続けていけば、これが自分本来の姿だと思う時が必ず来るはずです。それが本当の「自分らしさ」だと思います。
「自分らしさ」は、親から授かった自分に与えられた能力・個性です。それを一生懸命に磨き続けていると、「自分本来の姿」に変身できるのです。それまでは、あれこれ文句を言ったり言い訳をしたりせずに、自分を磨き続けなければなりません。これが中途半端だと、オタマジャクシとしては成長できたとしてもカエルにはなれません。自分磨きを途中で怠ると、大きな青虫になれても蝶には変われません。自分に与えられた能力・個性を一生懸命に磨き続けることが大事なのです。

 それでは、どのように自分を磨き続けていけばよいのでしょうか。私たちには、「しなければならないこと」「したいこと」「できること」の3つがあります。「したいこと」を我慢し、「しなければならないこと」だけをする、そんな生活が続くと、一向に自分の夢や希望に近づいていないように感じ、「このままでいいのか、こんなはずじゃない」と思いがちです。しかし、実はそうではありません。逆に、「しなければならないこと」を脇に追いやり、「したいこと」だけをしていると、いつまでたってもオタマジャクシや青虫のままで、成長は望めません。「できること」も増えていきません。
 皆さんが、上野高校で、「しなければならないこと」と「したいこと」の両方をうまく両立させ、自分らしく、大きく成長することを期待します。

最後になりましたが、御多用の中、御臨席賜りました御来賓の皆様方に、高い所からではございますが、心から御礼申し上げます。本当にありがとうございました。これからも、本校に対し、一層の御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

待ちわびた春は十五歳の希望の春。新入生324名の大いなる成長を祈りつつ、式辞といたします。

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