上高ニュース

入学式 校長式辞

2015.05.18

 春の風が学校に花の匂いや鳥のさえずりを運んでくれる今日の良き日、多数の御来賓の皆様、入学生の保護者の皆様の御臨席のもと、2015年度入学式を執り行うことができますことは、私共のこの上ない喜びであり、誠に嬉しく存じます。本校を代表し、深く感謝申し上げます。

 上野高校の制服を着て本校の校門をくぐった新入生のみなさん、入学おめでとうございます。心から歓迎いたします。

 保護者の皆様、お子様の御入学、誠におめでとうございます。これまでお子様を育ててこられました皆様の御尽力に衷心より敬意を表すとともに、私共教職員に課せられた責任の重さに身の引き締まる思いでございます。お子様に寄せる思いを真摯に受け止め、私共教職員は、お子様の大いなる成長を目指して教育活動に取り組んでまいります。どうか、本校の教育活動に御理解、御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 さて、新入生の皆さん。皆さんは、義務教育を終え、今日から高校生として新しい生活に入ります。期待に胸を躍らせながらも、不安も感じていることでしょう。しばらくの間、落ち着かない日々が続くと思いますが、心を開いて何でも尋ね、早く上野高校に慣れてください。

 皆さんは、御家族や中学校の先生方の支援があったにせよ、最終的には自らの責任で高校進学を決められたことと思います。高校では、国民の義務としての教育状況から大きく変化し、自己責任に裏打ちされた行動が一層求められます。その時、その場で、何をすべきで何をすべきでないのか、どうすることが適切なのか、自分で考え、判断し、自主的・主体的に行動する力を身に付けていってください。

 人生には「節目」というものがあります。皆さんは今、高等学校入学という大きな「節目」を迎えました。視力、聴力、そして言葉さえ失っても、福祉の人として人々の幸せのために尽くしたヘレン・ケラーは、こんな言葉を私たちに残しています。「幸福の一つの扉が閉じられると、別の扉が開く。しかし、私たちは、閉じられた扉をいつまでも見ているために、開いた扉に気付かない。」

 皆さんが少し前に経験した中学校卒業という「節目」では、共に過ごした人達との「別れ」を乗り越え、慣れ親しんだ多くの物、習慣、風景など生活の全てを大切な「思い出」として自分の中に刻み込んだことと思います。古い扉を閉め、いくつもある新しい扉のうち上野高校の扉を選んだ皆さんは、今日、新しい自分を生きていくために、その扉を開けました。

 そして、その扉には、こんな言葉が書かれています。「自彊不息」。「自ら彊(つと)めて息(や)まず」、すなわち、本校は、自分の夢を実現するために努力を怠らない生徒と、生徒の「大いなる明日」を見据えながら、生徒の挑戦を全力で支援する教職員が集う学校です。

 上野高校の生徒として、自信と誇りを持ち、新しい学友と共に、夢の実現に向けて努力を続ける「自立した学習者」に成長していってください。

 皆さんに、ある言葉を紹介します。数年前の社会人都市対抗野球大会の開会式で、JR東日本東北の野球チームの長谷部主将は、こんな言葉で選手宣誓をされました。「私たちが生きている今日は、亡くなった方々が生きたかった今日です。今、生きていること、働けていること、野球ができることに感謝の気持ちで一杯です。」震災直後、泥に埋まった駅舎の片付けなどにあたった長谷部さんたちは、被災地の惨状を前に、再びユニホームを着る日が来るとは思えなかったそうです。その後、再開された練習での「野球」は、震災前の「野球」と同じだったはずがありません。

 私たちは、あの東日本大震災で、人と人との「絆」、そして何より「感謝の心」の大切さを学びました。普段当たり前のようにしていることが、決して当たり前のことではなく、実は幸運な偶然の結果であることに気付かされました。自然の恩恵を受け、周りの人たちに支えられながら生きていること、誰かが生きたいと熱望した今日一日が自分に与えられたことに対し、感謝したいと思います。

 その上で、「3年間、本当によく頑張った」と、将来の自分から感謝されるような高校生活を送ってください。これから過ぎ去っていく過去は、皆さん自身の手でどのようにも創り上げることができます。今の皆さんには、自分の将来を決めるだけの可能性と力を持っています。皆さんにとって、今日からの一日一日がどれだけ価値のあることか、しっかりと今の自分の心の中に言い聞かせてほしいのです。

 最後になりましたが、御多用の中、御臨席賜りました御来賓の皆様方に、高い所からではございますが、心から御礼申し上げます。本当にありがとうございました。これからも、本校に対し、一層の御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 待ちわびた春は十五歳の希望の春。新入生280名の大いなる成長を祈りつつ、式辞といたします。

 

2015年4月8日 東 則尚

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