2016年度前期全校集会 校長講話②(全日制)

 先週25日(木)から2016年度前期の学校生活が再開しました。夏休み中は、勉学や補習、各種大会への参加、部活動の練習・合宿・試合、そして家の手伝いなど、普段とは違う多くの経験をしたことと思います。それらの経験は、皆さんの成長の糧となったに違いありません。

 さて、私は若い頃、先輩の先生方から冗談交じりに、よくこんなことを言われました。
「若い頃の雑用は買ってでもせよ。」
これを、ある脳神経外科医が提唱しています。「人のやりたがらない雑用を自ら買って出る。ささいな用事を面倒くさがらずコツコツやる。その習慣が身に付けば、脳の前頭葉が鍛えられ、自らの意志で主体的に行動する力が身に付く。」とその医師は断言しています。脳にとって雑用は、スポーツに例えれば筋トレに当たるという訳です。

 ところで、皆さんもいずれは就職すると思います。もしかすると、皆さんの中には、就職先では「雑用はしたくない。誰にでもできる『単純な仕事』ではなく、自分の得意なことをやりたい、企画の仕事をやりたい、研究開発をやりたい、できれば社長をやりたい」と考えている人もいるかもしれません。しかし、ほとんどの人は、就職してしばらくは自分のやりたい仕事はできません。若いうちは、最初は「単純な仕事」をすることが多いのが実情です。この「単純な仕事」すなわち「雑用」について、今日は考えてみたいと思います。

 結論を先に言うと、世の中には何一つ「単純な仕事」などないということです。
 こんな話を、ある会社の人事の人に聞いたことがあります。コピーを取るという仕事でも「初級・中級・上級」の3段階がある。
・ 「コピー初級」の人は、コピー機の操作をただ単に知っているだけ。人に聞かなくてもとりあえずコピーを取れる人。
・ 「コピー中級」の人は、例えば10枚のコピーをする時、1枚目をコピーして、紙の傾き、文字や写真の濃度を確かめてから残りの9枚をコピーする人。
・ 「コピー上級」の人は、頼まれた文書に目を通し、「この人はこんな文章を書くんだ」とか「こんなことが今、会社で話題になっているんだ」というように、内容についての関心を持ちながらコピーする人。場合によっては、誤字・脱字を含めて不備を指摘することもできる人。
 世の中には、同じ「単純な仕事」をしていても、このようにはっきりと違う仕方で仕事をする人がいるということです。

 自動車関係の職場で言えば、最初のうちは洗車ばかりで、「これではガソリンスタンドのアルバイトの方がましだ」と思うかもしれません。建築関係の職場で言えば、工事現場の資材の運搬や後片づけばかりかもしれません。IT関係の職場では、データベースのデータ入力の仕事だけをさせられるかもしれません。
しかし、これらの仕事は、決して「単純な仕事」ではありません。「雑用」ではないと思える人だけが、次の水準の仕事ができるようになるということだと思います。

 ここで、ある会社が北海道に宅配便の版図を広げた時の話を紹介します。
「営業を始めた当初は注文が一件もなく、小荷物の配達を独占していた郵便局の前で、訪れる人に手当たり次第に声をかけるも全く相手にされない日々。そんなある日、一人の社員の元に郷里の母親から荷物が届く。中には手編みのセーター、手製の味噌、刻んだ大根と油揚げ。そして『風邪に気をつけて頑張りなさい』との手紙。『真心の詰まった大切な荷物を運ぶこと。それが俺の仕事だ。』と気づいたこの社員は、今まで以上に腰が折れるほど深く頭を下げて声をかけ続ける。すると一人の老婦人が、『あなたがあんまり熱心だから』と孫のために編んだセーターの入った荷物を差し出した。それ以後、次第に注文が入るようになり、多くの営業所を抱え現在に至っている。この社員は今でも赤ん坊を抱くかのように必ず両手で荷物を受け取っている。」

 小荷物を受け取るという「単純な仕事」に意味を見出し、心を込めて対応したこの社員のように、「コピーを取る」「洗車をする」「データを入力する」などの「単純な仕事」の意味を知り、深さを知り、誠実に対応する人になれるかどうか。そこが、人や組織が成長・発展するかどうかの分岐点です。

 それでは、高校生の皆さんにとって、大切にすべき「単純な仕事」とは何か。例えば、
・ 途中を省略することなく丁寧な字で計算式をノートに書くことです。
・ 知らない単語があれば、その都度、辞書で調べて自分の単語帳に書き留めることです。
・ 運動部員はグランドや体育館を、練習後に「心が洗われる」くらい整備することです。
・ 文化部員は活動場所を「聖域」のごとくきれいにし、道具類は「慈しみの心で」片付けることです。

 来月には最大の学校行事、「文化祭」があります。練習や準備等で忙しい日々が続くと思います。「雑用」もたくさんあると思います。「クラスのために、クラブのために、人のために」の考え方で、「助け合う喜び」「一つになる充実感」を感じる、思い出に残る素晴らしい文化祭にしてください。

 そして3年生の皆さん。この夏は自分の進路について真剣に考え、勉学に励んだことと思います。「自分の人生は自分で責任を持つ」の姿勢で、進路選択という大きな人生課題に向き合い続けてください。その上で、一人一人の進路実現を皆で支え合うクラスの結束力を、文化祭を契機にして一層高めていってください。

 これで、前期2回目の全校集会の話を終わります。

2016年度2学期始業式 校長講話(定時制)

 私は若い頃、先輩の先生方から冗談交じりによくこんなことを言われました。
「若い頃の雑用は買ってでもせよ。」
 これを、ある脳神経外科医が提唱しています。「人のやりたがらない雑用を自ら買って出る。ささいな用事を面倒くさがらずコツコツやる。その習慣が身に付けば、前頭葉が鍛えられ、自らの意志で主体的に行動する力が身に付く」とその医師は断言しています。脳にとって雑用は、スポーツに例えれば筋トレや柔軟体操に当たるという訳です。

 こんな話を、ある会社の人事担当の人に聞いたことがあります。コピーを取るという仕事でも「初級・中級・上級」の3段階がある。
・ 「コピー初級」の人は、コピー機の操作をただ単に知っているだけ。人に聞かなくてもとりあえずコピーを取れる人。
・ 「コピー中級」の人は、例えば10枚のコピーをする時、1枚目をコピーして、紙の傾き、文字や写真の濃度を確かめてから残りの9枚をコピーする人。
・ 「コピー上級」の人は、頼まれた文書に目を通し、「この人はこんな文章を書くんだ」とか「こんなことが今、会社で話題になっているんだ」というように、内容についての関心を持ちながらコピーする人。場合によっては、誤字・脱字を含めて不備を指摘することもできる人。
 世の中には、同じ「単純な仕事」をしていても、このようにはっきりと違う仕方で仕事をする人がいるという訳です。

 ここで、ある会社が北海道に宅配便の版図を広げた時の話を紹介します。
「営業を始めた当初は注文が一件もなく、小荷物の配達を独占していた郵便局の前で、訪れる人に手当たり次第に声をかけるも全く相手にされない日々。そんなある日、一人の社員の元に郷里の母親から荷物が届く。中には手編みのセーター、手製の味噌、刻んだ大根と油揚げ。そして『風邪に気をつけて頑張りなさい』との手紙。『真心の詰まった大切な荷物を運ぶこと。それが俺の仕事だ。』と気づいたこの社員は、今まで以上に腰が折れるほど深く頭を下げて声をかけ続ける。すると一人の老婦人が、『あなたがあんまり熱心だから』と孫のために編んだセーターの入った荷物を差し出した。それ以後、次第に注文が入るようになり、多くの営業所を抱え現在に至っている。この社員は今でも赤ん坊を抱くかのように必ず両手で荷物を受け取っている。」

 小荷物を受け取るという「単純な仕事」の意味を知り、深さに気づき、誠実に対応する人になれるかどうか。そこが、人の成長や組織の発展の分岐点です。

 それでは、高校生である皆さんにとって、大切にすべき「単純な仕事」とは何か。例えばそれは、
・知らない言葉があれば、その都度、辞書で調べることです。
・途中を省略せずに丁寧な字で計算式をノートに書くことです。
・授業が終わったら、机や椅子をきちんと元に戻し、道具類を「慈しみの心で」片付けることです。
・教室や廊下にゴミが落ちていたら拾って捨てることです。

 来月には「文化祭」があります。準備等で忙しい日々が続くと思います。「雑用」もたくさんあると思います。「助け合う喜び」「一つになる充実感」を感じながら、思い出に残る素晴らしい文化祭にしてください。これで、2学期始業式の話を終わります。