2015年度修了式式辞

2015年度の学校生活を締めくくるに当たり、今日は、私の一人の知人のことを話したいと思います。

 その知人は、私が最初に勤めた高校の教え子です。教え子と言っても、50歳を超える壮年です。彼は、私が顧問をしていた運動部の部員で、1年生の時の担任も私でした。

 彼が3年生の時の最後の公式試合でのことです。勝利を目前にした終盤、彼は痛恨の大きなエラーをしました。その後チームは浮足立ち、結局、我がチームは敗退しました。試合終了後、全員が泣き崩れ、それでも3年生のチームメイトは彼を抱きかかえながら声をかけていました。帰りのバスの中は、いつもなら賑やかな話し声が飛び交うはずが、誰もが沈痛の面持ちで、重苦しい雰囲気が漂いました。私も「早く学校に着いてくれ。」と祈るような気持ちだったことを今でも覚えています。実は、この痛恨のエラーが、彼のその後の人生に大きな影響を与えることになります。

 昨年のある日、彼から電話がかかってきました。それまで、そのチームの同窓会が何度か開かれていたのですが、彼はほとんど出席することがなかったので、本当に久しぶりでした。転勤で故郷に戻ることになったこと、ある仕事の責任者となったことなどを話してくれました。私は、次の日に彼と会う約束をしました。

 次の日の夕方、いつもより少し早く学校を出て、彼の住む町まで車を走らせました。そして、一緒に食事をしながら、彼は、その「苦い思い出」をバネにして生きてきたことを話してくれたのです。

 私は、あの頃と同じように真っ黒に日焼けした顔と年齢にしては皺が多いことに驚きました。相変わらず口数が少なく、昔をしのばせる笑顔で、静かに、あの頃と同じような口調で話してくれました。私は、彼が私に連絡をくれて久しぶりに会えたことも嬉しかったのですが、一番嬉しかったのは、「あのエラーがあったから、俺はここまでやってこれたんさ。」と言ってくれたことです。かつての教え子が高校卒業後約30年の間、「苦い思い出」をバネにして強く生き抜いてきたということを知り、心の底から嬉しさを覚えました。そして、彼の部顧問、担任だったことを誇らしく思いました。

 「過去に何があったか」が幸不幸を決めるのではない。悔しさをバネに前向きに生きていく。どんな辛い経験にも意味があると思える「強さ」を皆さんに持ってほしい。そんな思いで今日、知人の話をしました。

 今日は、一年間の締めくくりの日です。また、本年度末の人事異動で何名かの先生方との別れの日でもあります。しっかりと一年の締めくくりをして、本校を離任される先生方を感謝の気持ちで爽やかに送り出してください。

 以上で、修了式の話を終わります。

2016年3月24日(全日制)
3月22日(定時制)
東 則尚  

第18回『雪解』のつどいに上野高校生が参加

3月20日(日)に「第18回『雪解』のつどい」がハイトピア伊賀で開催されました。

『雪解』は、上野高校の前身である旧制三重第三中学を卒業した作家横光利一が、体験を元にして少女との淡い恋物語を描いた自伝的小説です。「雪解のつどい」は毎年様々な講師を招いて横光利一とその作品を顕彰する会です。

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2016年は横光利一が三重三中を卒業してから100年にあたり、今回は現役の上野高校生が会場に招かれました。当時の三中の『校友会報』をもとに横光利一の学生生活を振り返った後、本校の放送部4名(2年生の松田唯乃さん、松山友亮さん、山本絢加さん、1年生の山内萌恵さん)が『雪解』を朗読しました。また卒業生の里平健太さん、森永元希さん、1年生の冨澤有佐さんが感想を発表しました。三中生と上高生との共通点や相違点、「肉食系女子」が見た『雪解』の恋愛観など、高校生ならではの視点に会場からは笑いと感心の声があがりました。

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1学年 百人一首大会

3月17日(木)に上野高校の1年生が1グループ7人に分かれ、「百人一首大会」を行いました。生徒は1枚の札に白熱し、楽しんでいました。

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結果は以下の通りです。

クラス  1位 1年7組

     2位 1年5組

     3位 1年3組

個人  1位 冨澤有佐さん(1年7組)

    2位 森林夏強くん(1年5組)

    3位 權蛇由夏さん(1年3組)

    4位 菅 美帆さん(1年5組)

    5位 藤本有見加さん(1年2組)

    6位 幾世冬悟くん(1年7組)

    7位 古川明香里さん(1年3組)

    8位 大櫃温仁くん(1年7組)

    8位 加藤大暉くん(1年7組)

    10位 西前千都世さん(1年5組)

    10位 堀川出帆くん(1年7組)

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1学年進路LHR 「卒業生による進路講話」

進路講話 進路講話

3月14日(月)の5・6時間目に1年生対象の進路LHRである「卒業生による進路講話」を実施しました。

講師は大学1年生から4年生までの本校卒業生8名です。

大学生活の様子や学問の面白さ、就職や研究などの将来に向けて頑張っていることなどを聞き、大学受験や将来に向けて多くの事を感じ取っていました。

平成27年度卒業式 式辞(定時制)

今日から弥生三月。天地自然の営みが、風光る春の訪れを予感させる今日の良き日、御来賓の皆様、卒業生の保護者の皆様の御臨席のもと、平成二十七年度卒業式を挙行できますことは、私共のこの上ない喜びであり、誠に嬉しく存じます。本校を代表し、深く感謝申し上げます。

 高等学校卒業という人生の大きな節目を迎え、未来に向かって羽ばたこうとしている11名の皆さん、卒業おめでとう。希望と不安が惜別の思いに交錯し、複雑な気持ちの中で爽やかな清新さを感じる、そんな心境ではないかと思います。皆さんは四年間、勉学は勿論、学校行事や生徒会活動その他さまざまな活動に取り組み、上野高校定時制の歴史に新たな一ページを書き加えてくれました。皆さん一人一人の努力に、称賛の拍手を送りたいと思います。そして、私たち教職員に多くの感動と、この学校で勤務する喜びを与えてくれたことに、心から感謝します。本当にありがとう。

 そして、皆さんを支えてくれた多くの人々、ことに皆さんの成長を心待ちにし、深い愛情で見守っていただいた保護者の皆様に、心よりの敬意と感謝の気持ちを込めて、お祝いの言葉を申し上げたいと存じます。「保護者の皆様、本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。」今日のお子様の姿をご覧になり、さぞかし感慨もひとしおのものがおありであろうと拝察いたします。心からお喜び申し上げます。

 さて、卒業生の皆さん。皆さんは今、卒業を機に大きな一歩を踏み出そうとしています。どうか、夢に向かって初志貫徹を果たしてください。一方で、挑戦はしたものの希望の実現には結び付かなかった人もいます。卑屈になる必要はありません。若い頃の志を貫ける人はそう多くはないのです。長い人生の中では、環境の変化で、あるいは自分の心境の変化で方向転換することもあります。

 どのような道を歩むにせよ、高校を卒業するということは、責任ある存在として社会に認知されるということです。今後は、責任に裏打ちされた行動が一層求められます。自己責任の重さは、今までとは比べようがないものになります。

 高等学校卒業。それは、人に愛される自分から、人を愛する自分に変わる時です。甘えと決別し、感謝の心で一人立ちをする時です。そして、学ぶべきことを与えられる自分から、何を学ぶべきかを自分で考え、自力で学ぶ自分に変わる時です。いかなる状況にあっても、どんな人生を生きようとも、学ぶことに終わりはありません。生涯、辞書を引き続けてください。常に新しい知識を学び、知ることに終わりなきことを肝に銘じてください。

 皆さんは若い。「若い」という字は「苦しい」という字に似ています。苦難は誰にでもあります。そして、年齢と共に増えていくものです。しかし、若い皆さんの苦しみは、もう一歩で、もう少し縦の一画を横にそらすことで、「若さ」即ち「成長の可能性」を秘めています。私はそこに「若さ」のしなやかさを感じ取ります。

 苦しい時は、闇の中にいるようで、それが永遠に続くような気がします。しかし、そうではありません。冬は必ず春になります。冬の寒さを知る人だけが、暖かい春の幸せを実感できます。誰よりも苦しんだ人が、誰よりも人の心が分かる人になれるのだと思います。私はそこに「苦しみ」の希望を感じ取ります。

 昨年、ワールドカップ2015イングランド大会で、優勝2回の強豪・南アフリカを破る大躍進を果たしたラグビー日本代表。その勝利はラグビー史上最大の“番狂わせ”と言われ、日本のみならず全世界を感動の渦に巻き込みました。日本代表の主将を務めたリーチ・マイケル選手は、「たまたま勝てたわけではない。相手の調子が悪かったからでもない。課題を明確にし、緻密に練られた“世界一厳しい練習”をしてきたからだ。」と断言します。

 3点リードされて迎えた試合終了間際、南アフリカの反則で、敵陣ゴール前でのペナルティーゴールを決めれば同点に追いつくチャンスを得た時、決断を委ねられたリーチ主将は、迷うことなく、ペナルティーキックではなく逆転トライを狙うスクラムを選択します。「冷静に粘り強くプレーすれば、この試合は絶対に勝てると確信していました。『必ず勝つ』と決めて準備してきたからです。」と振り返ります。

 「苦難こそ希望の証。ピンチは飛躍の踏み台。」この醍醐味を知るとき、人生は強く、明るく、生きるに値するものとなります。

 さあ、卒業生の皆さん。船出です。帆を張り、大海原に船を漕ぎ出す時です。東に進むのか、西に進むのか、決めるのは海の風ではありません。帆のかけ方です。皆さん自身の心の構えです。海は凪か時化か。運命の風に翻弄されてはいけません。海図を読み、位置を確かめ、目指すゴールを見定め、仲間と交信しながら、智恵と勇気で疾風怒濤の中を乗り越えていってください。そして、陸で無事を祈る大切な人々に連絡を怠ることなく、時には魚と戯れ、時には夜空の星の瞬きに心をときめかせ、人生の航海日記に書き込みを続けていってください。

 最後になりましたが、御多用の中、御臨席賜りました御来賓の皆様方、本日は誠に有難うございます。これからも本校に温かい御支援を賜り、卒業生、在校生を見守って頂きますようよろしくお願い申し上げます。

 卒業生11名の船出を祝い、前途に幸多かれと祈りつつ、式辞と致します。

2016年3月1日 東 則尚

第67回卒業証書授与式 式辞

 今日から弥生三月。天地自然の営みが、風光る春の訪れを予感させる今日の良き日、多数の御来賓の皆様、卒業生の保護者の皆様の御臨席のもと、平成27年度卒業式を挙行できますことは、私共のこの上ない喜びであり、誠に嬉しく存じます。本校を代表し、深く感謝申し上げます。

 高等学校卒業という人生の大きな節目を迎え、未来に向かって羽ばたこうとしている283名の皆さん、卒業おめでとう。希望と不安が惜別の思いに交錯し、複雑な気持ちの中で爽やかな清新さを感じる、そんな心境ではないかと思います。皆さんは三年間、勉学は勿論、学校行事や部活動その他さまざまな場面において素晴らしい成果を残し、上野高校の歴史に新たな一ページを書き加えてくれました。何事にも一生懸命な誠意溢れる姿勢で取り組まれた皆さんの努力に対し、称賛の大きな拍手を送りたいと思います。そして、私たち教職員に多くの感動と、この学校で勤務する喜びを与えてくれたことに、心から感謝します。本当にありがとう。

 そして、皆さんを支えてくれた多くの人々、ことに皆さんの成長を心待ちにし、深い愛情で見守っていただいた保護者の皆様に、高い所からではございますが、心よりの敬意と感謝の気持ちを込めて、お祝いの言葉を申し上げたいと存じます。「保護者の皆様、本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。」今日の我が子の姿をご覧になり、幼かった頃に思いを馳せ、さぞかし感慨もひとしおのものがおありであろうと拝察いたします。心からお喜び申し上げます。

 さて、卒業生の皆さん。皆さんは今、自分の夢を実現すべく、卒業を機に大きな一歩を踏み出そうとしています。どうか、夢に向かって初志貫徹を果たしてください。一方で、挑戦はしたものの希望の実現には結び付かなかった人もいます。卑屈になる必要はありません。若い頃の志を貫ける人はそう多くはないのです。長い人生の中では、環境の変化で、あるいは自分の心境の変化で方向転換することもあります。

 どのような道を歩むにせよ、高校を卒業するということは、責任ある存在として社会に認知されるということです。今後は、責任に裏打ちされた行動が厳しく求められます。自己責任の重さは、今までとは比べようがないものになります。

 十八歳、卒業の時。それは、親に愛される自分から、親を愛する自分に変わる時です。甘えと決別し、感謝の心で一人立ちをする時です。そして、学ぶべきことを与えられる自分から、何を学ぶべきかを自分で考え、自力で学ぶ自分に変わる時です。いかなる状況にあっても、どんな人生を生きようとも、学ぶことに終わりはありません。生涯、辞書を引き続けてください。常に新しい知識を学び、知ることに終わりなきことを肝に銘じてください。

 皆さんは若い。「若い」という字は「苦しい」という字に似ています。苦難は誰にでもあります。そして、年齢と共に増えていくものです。しかし、若い皆さんの苦しみは、もう一歩で、もう少し縦の一画を横にそらすことで、「若さ」即ち「成長の可能性」を秘めています。私はそこに「若さ」のしなやかさを感じ取ります。

 苦しい時は、闇の中にいるようで、それが永遠に続くような気がします。しかし、そうではありません。冬は必ず春になります。冬の寒さを知る人だけが、暖かい春の幸せを実感できます。誰よりも苦しんだ人が、誰よりも人の心が分かる人になれるのだと思います。私はそこに「苦しみ」の希望を感じ取ります。

 昨年、ワールドカップ2015イングランド大会で、優勝2回の強豪・南アフリカを破る大躍進を果たしたラグビー日本代表。その勝利はラグビー史上最大の“番狂わせ”と言われ、日本のみならず全世界を感動の渦に巻き込みました。日本代表の主将を務めたリーチ・マイケル選手は、「たまたま勝てたわけではない。相手の調子が悪かったからでもない。課題を明確にし、緻密に練られた“世界一厳しい練習”をしてきたからだ。」と断言します。

 3点リードされて迎えた試合終了間際、南アフリカの反則で、敵陣ゴール前でのペナルティーゴールを決めれば同点に追いつくチャンスを得た時、決断を委ねられたリーチ主将は、迷うことなく、ペナルティーキックではなく逆転トライを狙うスクラムを選択します。「冷静に粘り強くプレーすれば、この試合は絶対に勝てると確信していました。『必ず勝つ』と決めて準備してきたからです。」と振り返ります。

 「苦難こそ希望の証。ピンチは飛躍の踏み台。」この醍醐味を知るとき、人生は強く、明るく、生きるに値するものとなります。

 さあ、卒業生の皆さん。船出です。帆を張り、大海原に船を漕ぎ出す時です。東に進むのか、西に進むのか、決めるのは海の風ではありません。帆のかけ方です。皆さん自身の心の構えです。海は凪か時化か。運命の風に翻弄されてはいけません。海図を読み、位置を確かめ、目指すゴールを見定め、仲間と交信しながら、智恵と勇気で疾風怒濤の中を乗り越えていってください。そして、陸で無事を祈る大切な人々に連絡を怠ることなく、時には魚と戯れ、時には夜空の星の瞬きに心をときめかせ、時には故郷に思いを馳せ、人生の航海日記に書き込みを続けていってください。

 最後になりましたが、御多用の中、御臨席賜りました御来賓の皆様方、本日は誠に有難うございます。これからも本校に温かい御支援を賜り、卒業生、在校生を見守って頂きますようよろしくお願い申し上げます。

 卒業生283名の船出を祝い、前途に幸多かれと祈りつつ、式辞と致します。

2016年3月1日 東 則尚