卒業式式辞

 厳しかった今年の寒さも日ごとに和らぎ、山の緑も心なしかよみがえった感じがいたします。   本日は、平成25年度卒業証書授与式をご来賓のみなさま、並びに保護者のみなさまをお迎えする中でこのように盛大にかつ厳粛に挙行できますことは本校にとって大きな喜びであり、みなさま方に心よりお礼を申し上げます。

 さて、本日全日制課程を卒業される191名のみなさん、ご卒業おめでとうございます。在校生と職員一同、今日の日を心よりお待ちしておりました。  皆さんは今、本校での高校生活を終え、新しい生活へ向けてスタートしようとしています。    本日の喜びは、みなさんの努力によることは言うまでもありませんが、陰ひなたでみなさんを、そっと優しくはげましてくださった保護者や、周囲の人々のおかげであることを忘れてはいけないと思います。  さて、卒業される皆さんに2つのことをお話しして、はなむけの言葉といたします。

  先日ソチオリンピック終わり、もうすぐパラリンピックが始まろうとしています。私もテレビやニュースで選手たちの活躍をよく見ました。その中で大変印象に残った一人の選手がいます。それはスキーモーグルの上村愛子選手です。1998年の長野オリンピックに初めて出場し7位入賞を果たしました。そのときは皆さんと同じ高校3年生でした。その後今回のソチまで5大会連続で出場し、1つずつ順位を上げてきました。前回のバンクーバで4位になったとき、「何で、こんなに一段一段(7→6→5→4位)なんだろう」と悔しそうにつぶやきました。ところがメダルが期待された今回のソチでも会心の滑りをしながら4位に終わりました。ところが後のインタビューで上村選手は「メダルは獲れなかったけど、すがすがしい気分です。」と答えました。16年間最後まで戦い抜き完全燃焼したからこそでてきた言葉だと思います。彼女はメダルはとれなかったけれどそれ以上のものを得たのだと思います。皆さんもこれからいろいろな試練にぶつかるでしょう。そのときは決してあきらめず挑戦してください。すぐには結果は現れないかもしれませんが、ねばり強く取り組むことでいつか必ず結果はでてきます。     二つ目のお話は、「天国(極楽)と地獄の食事」です。これは、原文はわかりませんが、かつて、よく見たテレビドラマで先生が生徒たちにはなしていたと記憶しています。   天国にも地獄にも食べ物は同じ分量、たくさんの食べ物があります。天国でも地獄でも,みんなテーブルを囲んで座り食事を始めるのですが,両者とも1メートル以上ある長い箸を使って食べなければならないのでした。天国でも地獄でもその条件は全く同じでした。  ところがいざ食事を始めると、天国と地獄ではその箸の使い方に大きな違いがありました。  地獄にいる人はその長い箸を使って一生懸命食べようとするのですが,箸があまりにも長いために、なかなか思うように食べ物を自分の口まで運ぶことができません。食べ物はポロポロと下に落ちるばかりでした。ですから地獄にいる人達はいつまで経っても食べることができず、いつも空腹の状態に苦しんでいました。  一方、天国にいる人達はいつもおなか一杯の満足感を味わい、幸せを感じながら過ごしていました。それはなぜでしょう、その理由は簡単です。天国にいる人達は、その長い箸を決して自分のためには使わなかったのです。その箸で食べ物をつまむと、その箸を自分の正面に座っている相手に向かって差しだし、相手の口元まで自分の箸で食べ物を運ぶのでした。テーブルを囲むお互いがみんな同じ箸の使い方をしています。相手が食べるための箸をみんなが持っているのでした。決して自分のために使う箸ではなかったのです。相手のために自分が働くことによって,相手もまた自分のために働いてくれる。天国ではそういうことが自然に行われているのでした。ですから天国にいる人達はいつもおなか一杯で幸せでした。  この話は、相手を思いやることによって、相手だけではなく、自分自身も、さらに周囲のみんなも幸せになることを表していると思います。  みなさん、これからの人生において、つまずきそうになったとき、この二つのお話を思い出してもらえば幸いです。    最後になりましたが、本日ご臨席いただきました保護者の皆様、ご来賓の皆様に、心より感謝申し上げます。  今後とも、本校卒業生の輝ける未来を温かく見守り、支え続けていただきますよう、よろしくお願いいたします。  以上をもちまして、式辞といたします。

                           三重県立名張高等学校 校長 長谷川博文




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