水について(雑学)

林 博明

 

 私たちの体内の60%を占める水分。体にとって大切な水分を上手に補給することは、健康維持のために重要なことです。水分は体の機能にさまざまな役割を果たしているため、私たちが口にするもので最も意識しなければならないものの一つです。

 純粋な水は、本来無味無臭です。雨水は蒸留水に近く、ミネラル成分など、ほとんど含んでいません。しかし、この純粋な水は、湯冷ましと同じようにおいしくありません。

 雨が地球に降ると、地質層や岩石層のすきまにしみ込んでいき、カルシウム、マグネシウムなどのいろいろなミネラル成分を溶かしこみます。これが水の味となります。水の味は、ミネラル分が多く含まれると硬く感じられ、少ないと軟らかく感じられます。この水の硬さを科学的に算出した数値が「硬度」です。すなわち、水に含まれているミネラル成分(カルシウム、ナトリウム、カリウムなど)によって、軟水と硬水に分けられています。

軟水は1リットル中100mg以下、硬水は200mg以上とされています。日本の各地で取水される水のほとんどは、軟水です。

 一般的に硬い水は、引き締まった味がします。冷やして飲むと、よりおいしく感じると言われています。一方、軟らかい水は、名前の通り口の中でやさしく広がる味がします。香りや風味を味わう日本茶や紅茶などには、この軟水が向いていると言われています。

 厚生省の「おいしい水研究会」の調査結果によると、おいしい水とは、

*蒸発残留物(ミネラル)  30〜200mg/

   *硬 度          10〜100mg/

   *遊離炭酸          3〜 30mg/

   *過マンガン酸カリウム消費量 3以下

   *臭気度           3以下

   *残留塩素         0,4mg/ℓ以下

   *水温           最高20度以下

と、あります。といっても、味は個人的な嗜好もあるので一概には言えません。ただ、言えることは、おいしい水は自然からの贈り物だということです。長い年月をかけて大自然のフィルターを通して、体に必要なミネラル成分を溶かし込み、湧き出てきた「大自然からの贈り物」こそ、おいしい水なのです。

 次に、ミネラルウオーターについての話を少し付け加えておきます。近年、おいしい水を求めてミネラルウオーターを飲む人が増えています。このミネラルウオーターは、地下から汲み上げたり、湧いてきた地下水を容器につめたものなど、さまざまな種類があります。

 *ナチュラルウオーター : 地下水を原水とし、沈殿・ろ過・加熱殺菌以外の処理を行わないもの。

 *ナチュラルミネラルウオーター : ナチュラルウオーターのうち、地層中のミネラル分が溶け込んだ地下水

(天然の二酸化炭素が解けて発泡性のある地下水を含むもの)をいう。

 *ミネラルウオーター : 沈殿・ろ過・加熱殺菌以外の処理(ミネラル調整・ばっ気・オゾン殺菌など)を行

ったもの。

 *ボトルドウオーター : 人工的に処理した水。

このように、分類されます。 次に、水のおいしさの決め手となるミネラル成分の主なものをあげておきます。

 *ナトリウム : 体液やとくにリンパ液の重要成分で、体液と細胞の水分調整をしたり、浸透圧のバランスに働きます。また、カリウムと関係し、筋肉の弛緩や精神の安定にも影響があります。ナトリウムが不足すると、だるさや食欲不振、血圧の低下、筋力の低下を招きます。

 *カリウム : 血圧を下げる作用をしているのがカリウムです。ナトリウムを多くとる場合は、カリウムを

         多くとるとよいとされています。カリウムが不足すると、むくみや神経過敏、吐き気、便秘、

筋肉痛、しびれ、高血圧などの症状が出てきます。しかし、カリウムが過剰になると、腎臓

機能障害があるときには、高カリウム血症になることがあるので、注意が必要です。

 *マグネシウム : 糖質やアミノ酸の代謝に関係する多くの酵素の活性化に関与しています。カルシウムを補助して心拍機能を正常に働かせます。また、体温を調節したり、カルシウムやカリウムなどの吸収を助けたり、代謝を助けたりします。マグネシウムが不足すると、手足のしびれを感じたり、疲れやすくなり、心臓の調子に異常がおきたりします。また、マグネシウムが多い水は、にがみや渋みが強くなります。

 *カルシウム : 骨や歯の形成・維持・筋肉の収縮の調整、神経の興奮や緊張を緩和する働きがあります。

また、肌の健康を維持し、関節炎や骨粗しょう症の予防にも有効です。カルシウムが不足

すると、歯や骨の形成障害がおこり、イライラしたりします。

以上のように、水に含まれるミネラル成分によって、水のおいしさが決まりますが、健康にも良いと言うことが分かっていただいたと思います。

 水は人間が生きてゆく上で最も重要かつ基本的なものであり、水を体内の取り込むということは生命を維持し、健康を維持することであるということです。

<水をたくさん飲もう>

 一日に体から出ていく水分は2リットルほどです。人間は尿や汗として排出するだけでなく、皮膚の表面などからも水分を放出しています。体から出て行った水分は、補給しなくてはいけません。水を多く飲むと、便のかさを増やし、朝一杯の水は胃腸を活性化させます。また、ミネラルウオーターは腸を刺激するため、便秘解消には効果的です。

 水分を多く取ると「むくみ」が気になるという人もいますが、その原因は新陳代謝がうまくいかないために起こります。水分のバランスを保ち、新陳代謝をよくすることが大切です。

 体の水分が不足すると、細胞が衰えていきます。そうすると血液が濃くなり、ドロドロ血になります。ドロドロ血は脳血栓や脳梗塞などの血管障害を引き起こし、栄養障害になったり、病気がちになります。一日に飲む水の量は約1,5リットルと言われていますが、その倍の水を飲む習慣をつけると、細胞の老化を遅らせることができ、血液もサラサラになります。

 赤ちゃんはみずみずしい肌をしています。生まれたての赤ちゃんは体重の75〜80%が水です。成長するにつれて細胞が増えるため、体の水分量は減少していきます。子どもは非常に活動的なため、水分の出入りも多く、大人が水分補給に注意してあげることが大事です。また、高齢者も水分補給が重要です。体に含まれる水分量は歳を重ねるごとに減少します。高齢者の皮膚は水分を保つ力が減るため、しわが目立つようになるのです。加齢とともに腎臓の働きも衰えますので、尿を濃縮することができず、老廃物を排泄するためにはより多くの尿が必要となります。