健康について(パート2)

林 博明

<ウォーキング>

 *中年太りの原因は「基礎代謝量の低下」*

  ・「以前と比べてそんなに食事量が変わらないのに、お腹が出てきた」「生活習慣が変わらないのに、体重が増えてきた」などの悩みを持っている中年の人が増加しており、その原因は基礎代謝量の減少にあります。

   基礎代謝とは、生命を維持するために使われるエネルギー消費のことです。心臓・肺・胃や腸といった内臓の活動は生命維持のために常に行われており、エネルギーを消費しています。また、体温を保つために常に発熱しています。すなわち、私たちの体は意識的に運動しなくても、毎日約1200キロカロリーのエネルギーを消費しています。基礎代謝の高低は、筋肉によって左右されます。体の6割は筋肉で構成され、基礎代謝に使われるエネルギーの4割を占めています。これが加齢によって筋肉が衰えると、基礎代謝が低くなり、余ったエネルギー(カロリー)は脂肪として蓄積され、いわゆる中年太りの原因となっています。エネルギー消費に見合ったカロリー摂取が大切です。

*運動は毎日手軽に続けられるものを*

 ・加齢とともに衰えてきた筋力を高めれば基礎代謝量は増加します。しかし、ウェイトトレーニングやダンベル運動などは、年齢的にも体力的にも少し無理があります。そこで、とりすぎた脂肪を燃焼させるには

  ウォーキングや水泳といった体内に酸素を取り入れながら長時間継続して行う有酸素運動が効果的です。

  なかでも、ウォーキングは特別な道具も必要なく、自分にあったペースで今すぐ始められるという利点があります。運動が苦手な人でも、隣の人とおしゃべりをしながら、また周りの四季の変化を楽しみながら続けることができます。

*脂肪を燃やす効果的なウォーキング*

 ・ウォーキングは足腰への負担も軽く、手軽に取り組めるため、今では市民的なスポーツになっています。

脂肪を燃焼させ、心肺機能もアップ、体力増進、基礎代謝量が上がるなど利点はたくさんあります。しか

し、単にだらだら歩いているだけでは、効果は半減です。正しい歩き方を意識しながら、脂肪を燃焼させ

る事が大切です。そこで、歩き方のポイントを少しあげておきます。

@腕のふり方 : ひじは直角に曲げ、手は胸の前で軽くにぎります。次に、肩の力を抜き、リラックスして歩くテンポ

に合わせて腕を振ります。普段の歩行よりもダイナミックなフォームを心がけます。

A着地の仕方 : 足の裏全体に意識を集中して、全面で地面を踏みしめるようにし、着地はかかとから行う。普段

の歩幅より少し大きく踏み出します。そして、必ずどちらかの足が地面についているようにする。

B緊張感をもって : 背筋を伸ばし、腹筋を意識して軽く力をいれます。ヒップアップを心がけながら、おへそから前

へ進むようにします。リラックスしながらも、脂肪を燃やそうという緊張感は保ちましょう。

C時間と強度 : 運動の開始直後のエネルギー源は、そのほとんどが血管内にある糖分で、脂肪が燃え出すのは約20分後からです。効果的に脂肪を燃やすために、十分なウォームアップを行うことが大切です。また、強度としては、隣の人と軽く会話ができ、軽く息が弾む程度のペースで行います。

 

<食べ物に関することわざ>

 *良薬口に苦し

・食事の後や休憩時間によく飲まれるコーヒーについて、「苦いコーヒーは胃が悪くなる」と言われ敬遠す

る人がいますが、実はこの「苦いコーヒー」について、意外と知られていない効能があるのです。

よく誤解されているのは、「深く煎ったコーヒー=苦いコーヒー=胃に悪い」と思われている点です。実は、コーヒーの中に含まれる代表的な成分のカフェインは中枢神経を刺激する、いわゆる「眠気覚まし」という効能のほかに、胃液の分泌を盛んにし、消化を助ける役目があります。よくイタリアの人びとは、食後に小さなデミカップで深煎りのコーヒーをグイッと飲み干しますが、これは脂肪分の多い食事の後、消化を助けるための生活の知恵となっています。

では、なぜコーヒーは胃を悪くすると言われているのでしょうか。これは、コーヒーに含まれるタンニン

という成分のせいなのです。タンニンは、すでに胃炎や胃の腫瘍などがある場合は、その患部を刺激して

しまい、症状を悪化させます。しかし、このタンニンは、深く焙煎することでその含有量が減少します。

つまり、浅く煎った、一般的に飲まれている酸味の強いコーヒーの方が、深く焙煎された苦味のあるコー

ヒーよりもタンニンが多く含まれ、胃に疾患を持つ場合には症状を悪化させてしまうのです。

胃の働きを助けるためにも、ちょっと苦めのコーヒーを飲んでみてはいかがですか?

 *朝茶は七里帰っても飲むべし

・このことわざは「朝にお茶を飲んでいないことに気づいたら、どんなに遠い道のりでも戻って飲みに帰り

なさい。」という意味です。

 お茶は、ビタミンをいっぱい含み、利尿作用、疲労回復、解毒作用もある健康飲料の王様です。朝に飲むのがいいと言われるのは、お茶に含まれるカフェインが眠気をすっきり覚ましてくれるからです。また、昔の人はお茶を神様へのお供え物として珍重していました。すなわち、朝の神聖なるお茶を飲むことで、一日の災いを避けようとしていたのでしょう。

 1991年のアメリカ科学協会総会で「発ガン物質と日本の緑茶を飲ませたマウスは、発ガン物質だけのマウスに比べて、ガンの発生率が50%以下になる」という実験結果がアラン・コニー博士から発表されました。日本でも国立ガンセンターの研究グループにより、緑茶に含まれているタンニンの主成分であるエピガロカテキンガレートにガンの抑制効果があることが動物実験で確かめられました。また、緑茶には血液中の血圧上昇成分を阻害する効果があることが、東北大学の研究で突き止められており、別の研究でも緑茶を飲むと身体に良いコレステロールだけが身体に残り、動脈硬化予防になるということが分かっています。また、お茶の成分中にある血圧上昇を抑える効果のあるγ(ガンマ)アミノ酸(ギャバ)も有名です。

 人間の身体のなかに出来る過酸化物質の成分を抑え、老化を防ぐ効果があるといわれているビタミンEをはるかに超える効果が緑茶にあります。(岡山大学医学部の研究で明らかになりました。実験データでは約20倍の効能があるそうです。)また、有害物質が摂取された場合、緑茶に含まれているタンニンがその有害物を凝固させて不溶性の物質に変え、体内への吸収を阻止し、解毒する作用が知られています。

 *秋刀魚が出ると按摩(あんま)が引っ込む

  ・秋に出回る刀のような魚で「秋刀魚」と書いて「サンマ」と読みますが、「狭真魚」(サマナ)と書かれた時代もありました。

秋刀魚には高血圧や動脈硬化に有効なEPA・DHAや風邪に効くビタミンA、貧血を防止するビタミンB12をたっぷり含むので、「秋刀魚が出ると按摩が引っ込む」つまり、栄養価が高いので按摩がいらないほど健康になるといわれています。内臓ごと食べるので鮮度のよさは絶対条件です。全体の銀白色と背の青色が鮮やかで、口先のオレンジ色がはっきりしている秋刀魚ほど新鮮とされています。

昔から「庶民の魚の王様」と言われてきた秋刀魚。その例として引き合いに出されるのが、落語の「目黒の秋刀魚」というのがあります。あらすじは、「昔、目黒へ狩りに出かけた殿様が、ある農家でサンマをごちそうになりました。これをたいそう気に入った殿様は、城へ戻ってからサンマを所望。家臣たちはようやく手に入れた季節外れのサンマを、小骨を取り、脂を抜くため汁椀に入れて供しました。これがまずいのなんの。がっかりした殿様、「サンマは目黒に限る」と言ったそうです。

秋刀魚は日本だけの味覚ではありません。現在、韓国船による三陸沖のサンマ漁の是非が問題になっていますが、韓国の食卓にもサンマ料理があります。日本でよく見られる塩焼きではなく、唐辛子をたっぷり使ったヤンニョンジャンで調味する「コンチチョムリ」(秋刀魚の煮付け)が定番料理だそうです。

青魚に多く含まれるDHAについては、以前から脳を構成する脂肪成分の10%がDHAであることは知られていたのですが、どんな機能を持っているのかが分かっていませんでした。ところが、DHAシンポジウムでマイケル・クロフォード教授により衝撃的な発表が行われました。

・健康な脳の形成と発育

・記憶・学習効果の向上

   DHAにはこのような機能があるということを、その後の研究者によって追試が行われ、やはりDHAが脳の機能に深く関係していることが立証されたのです。頭の働きを良くするDHAを直接、効率よく摂れるのは魚介類だけです。

秋ナスは嫁に食わすな

  ・「秋ナスは嫁に食わすな」ということわざがあります。秋になって実を付けたナスは、皮が柔らかく、種が少なく、実が締まってこの上なく美味しいと言われています。だから、「こんな旨いナスを嫁に食わすのはもったいない」という、姑の嫁いびりの言葉とされているのがまず一説です。逆に、「秋ナスは体を冷やして毒だから」あるいは「秋ナスには種がないので子どもが出来なくなるといけないから」というように、嫁をいたわったという説もあります。いずれにしても、秋ナスはつい食べ過ぎてしまうほど美味しいということです。

   ナスは和洋中を問わず、どんな料理にも合い、煮たり揚げたり炒めたり漬けたりと、まさに万能野菜ですが、実はその栄養価はあまり高いとは言えません。成分のほとんどが水分で、カルシウムと食物繊維がやや多いという程度です。しかし、ナスには高血圧やガンの予防に効果があるとされています。また、ことわざにもあるように、身体を冷やす作用があるので、昔から解熱、利尿、鎮痛などの民間療法に利用されてきました。また、酒の肴として食すると悪酔いの防止になるとも言われています。

   中国では昔から、ナスは身体の熱を冷ます、血液の滞りをなくす、腫れをとるなどの効果があると言われ、腹痛・下痢・関節炎・口内炎・内痔などの治療に使われてきましたが、最近になってこれらはルチン・エセルチンといった成分のはたらきによるものであることが分かってきました。血管の柔軟性を保つ、出血を防止する、血圧を下げるなどナスの血液に対するプラス効果が次第に注目されてきています。また、ナスは油の吸収率がとてもよく、油と一緒にすると血中コレステロールを抑制するはたらきが高まるとも言われています。